放射性物質残った除染土が省庁の花壇や官邸で再利用…今後は全国に普及する可能性も
画像を見る 経済産業省(東京都・霞が関)の花壇に投入される「除染土」(写真:時事通信)

 

■セシウムボールは体内にとどまりやすい

 

こうした点に加えて、さらに懸念されるのが、除染土に含まれる 不溶性放射性微粒子、別名“セシウムボール”の存在だ。

 

セシウムボールとは、原子炉の水素爆発によって放出された、セシウムをはじめとするさまざまな放射性物質が、コンクリートと結合してできたガラス状の微粒子だ。呼吸で肺に入る数ミクロンのものや、1微粒子で何百万ベクレルの高い放射線を発しているセシウムボールも見つかっている。

 

「放射性セシウムは水に溶けやすいため、体内に取り込んでも、血液や体液に溶けて体外に排出されるので、体内で半分になる時間が大人で90日、幼児で9日と試算されていました。

 

しかし、セシウムボールは水に溶けにくく、吸い込んだ微粒子が肺に吸着すると、体内で半分になるまでの時間は数十年になる、と九州大学大学院准教授の宇都宮聡さんらが指摘しています」

 

そう懸念を示すのは、数々の原発関連訴訟に関わり、被ばく問題に詳しい弁護士の井戸謙一さん。

 

「セシウムボールは、従来の放射性セシウムに比べて大人で約70倍、幼児で約180倍も被ばく量は大きくなる、と述べている専門家もいます。つまり、それだけがんになりやすいということです」(井戸さん)

 

除染土の多くに、セシウムボールが含まれている可能性がある。

 

「原発事故後、県内の土壌に含まれる放射性セシウムのうち、水に溶けにくいセシウムボールが占める割合は約5割であることが、数々の専門家の調査によって明らかになっています」(井戸さん)

 

埋め立て現場への運搬中や作業中に舞い上がったほこりを住民が吸い込む恐れは十分にある。

 

環境省に懸念を示すと、「国際的な最新の知見に基づいて内部被ばくを評価しており、吸い込んだ場合でも基準以下に収まる」と回答。

 

しかし、前出の大島さんと記者が根拠となる環境省の資料を確認したところ、セシウムボールのような局所的高線量微粒子については評価されていなかった。

 

「そもそも、再利用を進める環境省みずからが新基準を作って『この数値で安全です』と言って事業を進める構造に問題があります。日本の原子力規制委員会のような独立した規制当局による最終的な評価と承認が必要です」(大島さん)

 

まずは、こうしたリスクを国民にしっかり説明したうえで議論をしなおすべきだろう。

 

画像ページ >【写真あり】首相官邸の除染土による盛り土を視察する(右から)伊藤忠彦復興大臣、林芳正官房長官、浅尾慶一郎環境大臣(他2枚)

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