■海外で「美の定義はひとつではない」と気づいた
大人になっても、外見で評価されることは変わらない。第一印象が重視される社会では、恋愛、就職、接客などで外見が評価される場面も少なくない。「若い」「痩せている」「肌がきれい」「貫禄がある」――といった何気ない外見の指摘は、数えきれないほど飛び交っている。
前川さんも、ダイエットで体重が落ちて細くなったことで、周囲の評価が「痩せてキレイになったね」に変わり、「痩せるだけでこんなに褒められる」とさらにダイエットを続け、身長162cmで体重は40kgを切った時期も。
「それでも、気を抜くとデブスパッツに戻ってしまうと思い込んでいました」
大学卒業後、不動産会社や国際協力機構(JICA)、外務省と華々しい職場で活躍するものの、痩せることにこだわり、忙しくて運動ができないときは食事を減らし、1日飴玉3粒しか口にしない日もあったという。食べすぎたと思った日には、無理やり吐くことが週に何度もあった。
「自分の生きづらさの正体がルッキズムだと認識し始めたのが、拒食と過食を繰り返していた頃です。海外の友人から、『常に自分のコンプレックスを感じていて、痩せているのに食事をすることも恐れていてセクシーじゃない』と指摘されたこと。“内なる自信”が欠けていること、“自分のため”に生きていないからだと、ようやく俯瞰することができたんです」
ルッキズムに気づけたきっかけは、新しい環境に飛び込んだことも大きいと話す。
「仕事でアメリカやスリランカに長期滞在し、美の定義はひとつではないという大事な気づきがありました。見た目やお尻の大きさ、肌や髪の色など、各国にそれぞれのルッキズムや社会課題はありますが、異なる価値観に触れながら、少しずつ自分を紐解いていくプロセスを経て、私自身の問題ではなくルッキズムによって植え付けられた価値観だったと気づいたとき、自分にかけていた呪いが解けたんです」
