9月19日に開幕した愛知・名古屋アジア競技大会で、運営をめぐるトラブルが相次いでいる。選手団が宿泊施設へのチェックインで長時間待たされたほか、韓国男子バスケットボール代表からは、宿泊施設のベッドが短い、トイレから水漏れしているといった不満が噴出。輸送でも、選手を乗せるバスが予定時刻に来ないなどの混乱が報じられた。
さらに男子ホッケーの韓国戦では、試合前に韓国国歌ではなく北朝鮮国歌が流れるという重大なミスまで起きた。なぜ、これほどトラブルが続くのか。「東京オリンピック・パラリンピック2020」をはじめ、大型イベントにおける広告代理店と行政の関係を長年取材してきた作家の本間龍さんは、「その背景の一つに、大会全体のオペレーションを統括するプロ集団の不在があるのではないか」と指摘する。
「組織委員会は国歌の取り違えなどについて『ヒューマンエラー』と説明していますが、ヒューマンエラーは起きることを前提に、それを防ぐ仕組みをつくるのが運営のプロです。
例えば2メートル級の選手がいるバスケットボールチームに小さなベッドを用意すれば問題になることは、少し考えれば分かる。そうした初歩的なミスが相次いでいること自体、経験を持った人が全体を見ていないことの表れではないでしょうか」
■東京五輪の談合事件で変わった「電通頼み」
本間さんによると、東京五輪では、組織委員会に100人を超える大手広告代理店・株式会社電通(以下、電通)の社員が出向するなど、電通が大会運営に深く関与していたという。しかし大会後、テスト大会や本大会の運営業務をめぐる入札談合事件が発覚。公正取引委員会は、電通や株式会社博報堂などが受注予定者を決めるなどして競争を実質的に制限していたと認定し、排除措置命令などを出した。
当時の報道によると、アジア大会でも当初、スポンサー集めなどを担う専任代理店候補が内定していたが、2023年2月に辞退。その後、組織委は従来の大手広告代理店1社に委ねる方式を見直した。組織委は辞退した企業名を明らかにしていないが、電通だったと報じられている。本間さんは、電通に頼らない大会を目指したこと自体が問題なのではないという。
「電通に頼らず、自分たちでやろうとした志そのものは悪くなかったと思います。ただ、電通の場合、実際の仕事をするさまざまなイベント会社を集め、全体を見る役割を担っていた。今回は業務がそれぞれの会社に分かれていて、大会全体のオペレーションを最終的に誰が仕切っているのかが見えてこないんです」
