牛乳パックに描かれた宮内美穂子さん(74)の絵手紙が素朴で温かいと、いま話題を集めている。『母の風』のタイトルでまとめられた絵手紙集は、認知症を患った母(享年92)を介護した7年間の記録でもある。

『母の風』は、介護に悩む人々の共感を呼び、自費出版では異例の2千部をほぼ完売。つらいはずの介護を前向きにとらえる宮内さんの言葉に勇気づけられた人は多いという。絵手紙にはこんな言葉がならんでいる。

【認知症なれど「かわいいおばあさんやねぇ」と云ってもらえる母をもち、うれしく思う】

【とうとうきめてしまった。母も私も共だおれにならない前の今をえらんで他人にお願いすることを】

次第に子どもに帰っていく母。宮内さんは、それをおおらかに見つめてきたという。それは理想的な介護ともいえるが、決して簡単なことではない。なぜ、彼女はそんなことができたのか? 宮内さんはこう話す。

「それは知的障害がある三男を育てたからやと思います。三男は、普通の子どもができることが何もできなかった。それでもゆっくりゆっくりできるようになる。逆に母は、少しずつできることが失われていく。三男の子育てと母の介護にはものすごく共通点があったんです」

振り返れば、宮内さんの半生は介護ずくめの日々だった。知的障害の三男を21年、C型肝炎の夫を19年、要介護の父を半年、そして認知症の母を7年と、宮内さんは年数でいえば延べ47年半も介護を続けてきた。宮内さんは介護している人へこう提案する。

「介護をしていると、終わりの見えないつらさがひしひしと押し寄せてきて、落ち込んでしまうのです。だから介護している今を楽しまないと。歌でも絵でも何でもいい。楽しめるものを見つけること。それが心の余裕になるんです」

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