長引く不況とライフスタイルの変化で、近年”葬儀のあり方”は見直されつつある。その一方で急増しているのが「心ない僧侶」や「悪徳葬儀業者」と遺族間の金銭トラブルだ。『まんがで丸わかり!はじめてのお葬式』(イースト・プレス刊)の原作・構成を手がけたジャーナリスト、新郷由起さんはこう話す。

「60代の男性が母親のお通夜の席で60万円のお布施を渡すと『これはどういうことでしょう。最低でもこの倍額は……』と僧侶に詰め寄られたケースがありました。交渉の末、男性は100万円を分割で納めることになりましたが、僧侶は終始ふてくされた態度で葬儀を進行したそうです。また、義母の葬儀を仕切った50代後半の女性は、事前に『10人未満の小さな家族葬』と伝えていたのに当日3人も僧侶が来て、その分のお布施を要求されたそうです」

通夜や葬儀・告別式の当日”お布施”をめぐってトラブルに発展するのは珍しいことではないという。「葬儀の数日後、僧侶が”不足分”を集金に来るケースもあります。お布施の金額は通夜前日までに必ず確認、交渉するべきです」と新郷さん。

先祖代々の菩提寺を持つ檀家ならば立場的にも弱く、理不尽なお布施を断りきれないことも多々あるようだが。今や都市部などでは菩提寺を持たない家庭の方が多いはず。読経一式と戒名などは葬儀社経由の僧侶に任せるのが一般的だ。しかしそこにも思わぬ”落とし穴”があった。

「悪質な葬儀社は、社員に『在家僧侶養成講座』を受講させ”僧侶”と偽り葬儀で読経させることもあります。たどたどしい読経で見破られることもありますが、全宗派のお経を完璧にマスターしている”ニセ僧侶”もいるので見極めは困難。ある大手葬儀社のロッカールームには、全宗派の仏具や袈裟がそろえられているほどなんですよ」

と新郷さんは言う。さらに、葬儀社から“トンデモ寺院”を紹介されるケースもあるという。

「40代男性がお父さまの葬儀を行った寺院では、宗派どころか宗教も問わない“マルチ僧侶”がいたそうです。その男性は仏葬でお父さまを送り出したのですが、1年後、同じ寺院で行われた知人の葬儀に出席すると、同じ僧侶がキリスト教の祭服を着て讃美歌を歌っていたそうです」

関連カテゴリー:
関連タグ: