「友子ちゃんが2歳のころに、お父さんを交通事故で亡くされてから、お母さんが一生懸命に育ててこられました。ですから、お母さんは『小さいころから娘とは一心同体で一緒に喜び、負けたら一緒に落ち込むんです』と話していました」

女子柔道48キロ級で初めての五輪に挑んだ福見友子選手(27)の親族は、母娘の絆をこう明かした。小学2年で柔道を始めた娘を、シングルマザーの早苗さん(56)はいつも温かく厳しく見守り続けた。食べ盛りの中学、高校時代、階級を維持するための減量で、冷蔵庫の前で涙を流して我慢する娘を見ても、早苗さんは「もうやめなよ」とは言わなかった。

これまでずっと五輪に出場できなかったのは、同じ階級に谷亮子(36)という大きな壁が立ちはだかっていたからだ。だが、含みは谷亮子を2度も破っている。初めて谷に勝ったのは、高校2年のときだった。しかし、その後の’07年に再び谷に勝利したのものの、実績を理由に北京五輪の代表には選ばれなかった。

母は、今回の五輪出場を「娘が代表になると確信していましたから」と話している。前出の親族はこう続ける。

「友ちゃんはテレビでも言っていましたが、“お母さんのためにも金メダルを取りたい”という気持ちは強いと思いますよ。お母さんは『ケガだけはしないようにね』と言って、ロンドンへ送り出したそうです。立派なお母さんですよ」

娘の応援のためにロンドンに旅立った早苗さん。彼女が、娘について話した言葉は力強かった。

「心配は全然していないですよ。だって、柔道が命みたいな子ですから。今まで『世界一になって金メダル取りたいです』っていろんなものに書いていました」

惜しくも届かなかった金メダル。しかし、最初で最後に立つことができた五輪の晴れ舞台は、ロンドン五輪後に引退表明している彼女にとって、母への大きな恩返しとなったことだろう。

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