10月から、男女が逆転したよしながふみ原作のコミック『大奥』を映像化したドラマがTBS系でスタート。12月には映画も公開され、再び『大奥もの』に注目が集まっている。
「ときには3000人もの美女がひしめき、たったひとりの男の愛を奪い合う。これでドラマが生まれないわけがない。悲恋、愛憎、陰謀、誹謗中傷、バトルにいびりに怨霊まで、まさになんでもこい!」と、大奥がドラマの舞台となってきた理由を語るのは、時代劇に詳しいコラムニストのペリー荻野さん。ペリーさんに、『大奥もの』の歴史を教えてもらった。
まず映画。’59年に新珠三千代が主演した悲恋物語『千代田城炎上』が上映された。後にドラマで「耐える女」を当たり役にする新珠の美しさとたくましさが目に焼きつく。’67年公開の『大奥㊙物語』はかなり刺激的な内容だった。松島に山田五十鈴、年寄・浦尾に岸田今日子、女中たちに藤純子や小川知子などトップ女優がずらり。禁断の同性愛にまで踏み込み、今に通じる『大奥』の世界観を作った。
’70年代にはにっかつロマンポルノ路線でも『色暦大奥秘話』など大奥ものはヒットし、東映は『エロ将軍と二十一人の愛妾』という衝撃的なタイトルの作品を公開。
一方テレビドラマでは、華麗な絵巻物的スタイルが主流に。その元祖といえるのが、家光をめぐる愛の争奪戦『徳川の夫人たち』(テレビ朝日系・’67年)。人気を受け翌年には、徳川政権初期から幕末までを壮大なスケールで描いた『大奥』(関西テレビ系)がスタート。2年後の’70年には、美空ひばりも出演した『徳川おんな絵巻』が放送されている。
’83年に始まった『大奥』(関西テレビ系)は、男女逆転『大奥』の原作者・よしながふみ先生も大好きという連ドラ。レギュラー出演者を置かず、豪華メンバーによるオムニバス形式だった。毎回「思えば大奥とは、女人たちの運命のるつぼでございました……」と、ぞくぞく感満点の岸田今日子によるナレーションで始まり大ヒットした。
’89年のNHK大河ドラマは、大原麗子主演の『春日局』だった。橋田壽賀子原作・脚本で、橋田ファミリー大集合。平均視聴率32.4%のヒット作に。
フジテレビが久しぶりに制作に乗り出したのが、菅野美穂、浅野ゆう子、安達祐実らによる平成版『大奥』(’03年)だった。これもヒット作となり、続編『大奥〜第一章〜』は春日局に松下由樹が扮して、現在も舞台版を上映中だ。
「今も昔も、何が起きても不思議じゃないのが『大奥』。そもそも『大奥』という、秘密を予感させる名前をつけた人たちのセンスに、21世紀の私たちは拍手を送るべきかも」(ペリーさん)