「父は、すでに意思表示はできませんでしたが、20年ぶりに母が舞台に立つ前日に旅立ったというのは、非常に運命的なものを感じます。『俺のことは心配するな』と、旅立ったのかなと思っています」

“父の最後”について語るのは、長男の大島武さん(49)。1月15日、映画監督の大島渚さん(享年80)が、神奈川県の病院で肺炎のため亡くなった。家族が見守る中、静かに息を引き取ったという。翌16日、舞台『女のほむら』の初日を終えたばかりの妻の小山明子さん(77)が会見を行った。

「昨年の暮れから肺炎を起こしまして、私の舞台稽古のときから、ちょっと危ない状態が続いていました。私もすごく心配しておりましたが、15日という”いい日”を、彼は選んでくれたと思っています。この日は、舞台初日の前日でしたので、病院にも間に合いましたし、自宅に夫を連れて帰ることもできました」

小山さんは、’96年に大島監督が脳出血で倒れてから17年間、女優業を休み、妻として献身的な介護を続けてきた。長男の武さんは、大島夫妻の変わることのない”夫婦の絆”を明かしてくれた。

「父は最後、言葉がほとんど言えなくて、母のことを『ママ』と呼ぶことが多かったんです。それに対して母は『ママですよ』とか『ママ、帰ってきたわよ』とか声をかけていました。亡くなる日の朝も、父は『ママ……』と言っていたそうです。父が息を引き取ると、母は涙を流しながら『パパ、よく頑張ったね』と、話しかけていました」