「私が講習で、鉄砲の弾の作り方もお教えしました。素人の方にはできないんじゃないかと心配していたんですが、綾瀬さんが『とてもわかりやすいです』と言ってくださったので、ほっとしました」

そう語るのは、NHK大河ドラマ『八重の桜』で砲術指導を務める佐山二郎さん(65)だ。主人公・山本八重を演じている綾瀬はるか(27)も、狭山さんに鉄砲の指導を受けている。

「普通の俳優さんだと撮影するときだけ銃を持って、後は周囲のスタッフに返すことが多いのですが、綾瀬さんは休憩時間まで銃に慣れるためといって、ずっと持っていらしたんですよ。さすがに最初は『重い〜っ!』と言っていました。しかも、その重い銃を左手に持ちながら右手では銃の操作をする。男性でも扱うのは大変なので、最初は女性にはちょっと無理ではないかなと思っていました」

しかし綾瀬は、銃の持ち方などを熱心に尋ね、実際の動作の練習でもそのつど細かいことを質問し続けていたという。さらに自分でも肉体鍛錬をしていたことで、次第にコツを覚えるようになっていった。

「脇を締めるというコツもつかみました。一度そのコツを覚えたら、銃を持つ姿が堂に入っているんですよ。男性とはまたちょっと違う、きりっとした美しさがあるんです」(佐山さん)

時代が進むにつれて、八重はスペンサー銃という連発式の鉄砲を操るようになる。もともとアメリカの南北戦争のときに使われた銃で、重さは4.2キロ。男性でも、長時間しっかり持てるような銃ではない。ドラマの第1話の冒頭で、八重がこのスペンサー銃を打つシーンが出てきたが……。

「テスト撮影のときは、やはりぎこちなかった。でも撮影準備の合間に綾瀬さんが現場の隅のほうで、1人スペンサー銃をガッチャンガッチャン操作の練習をしているんです。それこそ何百回も。顔を真っ赤にして、汗だくになって銃に慣れるために一生懸命でした」(佐山さん)

撮影は、銃の操作をいかにスムーズに、自然に見せるかが勝負だった。

「それだけ、このシーンが大切だということをわかっていたのだと思います」(佐竹さん)

そして臨んだ本番は、見事な演技で一発OKとなった。

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