瀬戸内寂聴さんの本誌連載『青空説法』の最新単行本が発売されました。タイトルは『明日は晴れ』(光文社刊・1,050円)。「今日はどんなつらい日でも、明日はきっといい日になるはずですから絶望しないで!」というメッセージを込め、寂聴さんが名付けました。今回は「こどもの日」を記念して、親子関係にまつわる悩み相談と、寂聴さんのアドバイス・金言をご紹介します。

――息子との仲がうまくいきません。自分が産み育てた子ですから、「親孝行してくれ」とまでは言わないけれど、もっと親子の絆のようなものがあってもいいのではと思うのです。(60代の母親)

「してあげっぱなしで見返りを一切求めないのが本当の愛情なのに、10の愛情を与えたから利息をつけて12にして返してちょうだいと、あなたは思っている。それが12どころか10の半分も返ってこないから腹が立つ。でも銀行でさえ利息の付かない時代です。その考えは捨てなさい」

――中学で登校拒否になってから、ずっと家にいた娘が3カ月前に自殺。まだ36歳だったという。3カ月経って「だんだん娘を忘れていくことが、娘にとってかわいそう、すまないと思うんです」と罪悪感に苦しむ母親。

「お嬢さんは、亡くなった後で“自分が自殺したことでお母さんにたいへんつらい思いをさせている”ということがわかって、“お母さん、悲しませてごめんなさいね”と思っています。ですから、あなたが楽になることが、お嬢さんの後生を弔うことになるのです。どうか楽になってください」

――69歳の乳がんの母が、治療を嫌がっていることを告白した女性へ。

「医学は進歩していますから、それを信じてお母さんには、できるだけのことをしてあげないと、あとであなたがつらい思いをします」

――息子の離婚問題に悩む60代男性へ。

「あなたが優柔不断な息子に育てたのだから、しょうがない。もうほっといて、あなたは釣りでもなんでもして!」

――大学卒業の1カ月半後に事故で寝たきりになった息子が、病院に入院したまま5年になるという50代男性。「あんなに元気だったのが、しゃべることも、食べることもできない。人形と一緒で、本当に寝たきりなんです」と涙ぐんだ。

「本当にかわいそう。5年前の事故のときに亡くなったほうが楽だったかもしれないけれど、息子さんにはまだ定められた命があるから、そうやって生きていて、あなたたち両親の思いをつないでいるのです。息子さんの定命があるあいだ、少しでもよいことがありますように、と祈ってあげてください」

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