今月上旬、都内のリハビリ専門病院の前に1台の介護用車両が横付けされていた。病院からスタッフがストレッチャーを押して出てくる。その上には1人の男性の姿があった。肩まで毛布に覆われ、身体は動かないようにベルトで固定されている。搬送されていたのは、料理研究家のケンタロウ(40)だった。昨年2月4日にバイク事故に見舞われてから1年3カ月。初めて姿を見せた彼は、テレビに出ていたころよりもかなりやせて見えた。

事故直後の彼は左大腿骨骨折、右足関節脱臼骨折、顔面骨折、脳挫傷、外傷性くも膜下出血など満身創痍の状態だったという。さらに脳がダメージを負ったことで、記憶や感情表現に支障をきたす高次脳機能障害に苦しんできた。言葉もほぼ話せず両手足は麻痺。食事も鼻からチューブで取り、寝たきりの生活が続いた。

絶望的にも思えた彼の症状をいつも傍で支え続けてきたのが、妻の大谷マキさん(39)だ。この日も彼女は、スタッフと一緒にストレッチャーを押していた。だが、その表情には悲壮感などなく、どこか晴れやか。彼女は一緒に来ていたケンタロウの姉らと車に乗り込むと、都内にある別の病院へと向かった。「最終的な身体の検査を受けていたのでしょう。というのもケンタロウさん、実は来月末にも退院する予定なんだそうです!マキさんの喜びもひとしおでしょうね……」(夫妻の知人)

ここに至るまでには、マキさんの並々ならぬ努力があった。当初は夫の置かれた状況を受け入れることができず、精神的に追い詰められることもあったという。だが、彼女は泣き言を漏らすことはなかった。「当初、病院からは介護施設への入所を薦められていたそうなんです。でもマキさんは『高齢者が多い介護施設に(若い)主人が1人でいるのは可哀想。だから彼は私が自宅で看ます!』と申し出たそうです。自宅介護には特殊な電動車椅子や介護用ベッドも必要みたいで、彼女はその工面にも奔走していました」(前出・夫妻の知人)

自宅介護に向けて動き出したマキさん。そんな彼女の奮闘に応えるかのように、最近、ケンタロウは、ある“奇跡”を起こしていたという。「ケンタロウさんはリハビリの際、専門のスタッフに支えられながらですが、少しだけ歩くことができるようになったそうなんです!とは言っても、普段はベッドでの寝たきり生活であることは変わりありません。でも、以前なら考えられないほどの回復ぶりです」(前出・夫妻の知人)

今後は、訪問リハビリや月のうち一定期間を入院させるショートステイの受け入れ先が決まり次第、退院することになりそうだという。夫妻が夢見た退院の日は、もうすぐだ――。

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