福山雅治(44)の主演映画『そして父になる』が今回のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した。公式上映会では10分以上のスタンディングオベーションが続き、大きな喝采を浴びながら、福山は思わず涙。会見に臨んだ福山は父親役を演じた夏八木勲さん(享年73)に触れ、「夏八木さんが、きっと観ていてくれているという感じがしました」と“亡き父”に思いを馳せていた――。
福山がカンヌ入りする直前の5月11日、すい臓がんのため亡くなった夏八木さん。今回の映画で父親役を演じただけでなく福山にとって夏八木さんは大きな存在だったという。
「福山さん主演のNHK大河ドラマ『龍馬伝』(’10年)でも2人は共演しています。そして今作では、福山さんが夏八木さん演じる父親から“家族の大切さ、血縁の重要性”を説かれる重要な場面があります。会場でそのシーンが流れると、福山さんは食い入るようにスクリーンを見つめていましたね」(映画関係者)
夏八木さんの闘病生活は昨秋に始まったという。夏八木さんの最後の収録現場となった昨秋のドラマ『ゴーイングマイホーム』(フジテレビ系)も是枝裕和監督(50)が演出した。
「夏八木さんは、是枝監督だけに病状を打ち明け、『芝居がやりにくくなると申し訳ないので、共演者・スタッフには内緒にしてほしい』と頼んだそうです。最終回では夏八木さん演じる父親の葬儀シーンがあり、夏八木さんは『良い予行演習になるから』と画面には映らないのに自ら進んで棺の中に入りました」(ドラマ関係者)
容体が急変したのは5月9日。夫人と娘に看取られて静かに息を引き取ったという。
「ご自身の病気のことは、事務所にさえ詳しく報告していなかったそうです。夏八木さんは、ご家族の話も『役者にプライベートは関係ない』と、まったくしませんでした。しかし実は上の娘さんを一昨年、亡くされているんです。このときも周囲にほとんど知らせず『数日間、休みが欲しい・・・』と言っただけでした」(夏八木さんの知人)
夏八木さんは29歳で8歳下のまり子夫人(65)と結婚。2人の娘を授かった。長女は写真家となり、学生時代に撮った、パイプをくわえた夏八木さんの写真を夏八木さんは自宅に飾り、長らく気に入っていたという。
「長女は乳がんを患っていたといいます。病魔に蝕まれながらも自分が育った鎌倉や湘南を撮り続けていました」(前出・知人)
愛娘に先立たれた悲しみを胸に秘め、追うように旅立った夏八木さん。福山は夏八木さんの寡黙な背中に“父の心情”を教えられた記憶を鮮やかに思い出していたことだろう。