‘93年からトータル18年間、昼ドラの制作にかかわり、現在は統括する立場にあるのが、東海テレビ制作局長の鶴啓二郎さん。制作者が語る「昼ドラテイスト」の秘密とは?
「表現は『ハッキリ、クッキリ』。月曜から金曜まで放送しているからといって、1日目は『起』、2日目は『承』……という作り方はしません。その日、たまたまチャンネルを合わせた人も『面白い』と思ってもらえるよう、1回ごとにしっかり起承転結を入れます。正味20数分の作品に起承転結を入れるため、無駄をそぎ落とした“むき身”のセリフと見せ場になるんです」(鶴さん・以下同)
たしかに昼ドラには、イメージシーンはほとんどない。毎回、怒涛の展開で「目が離せない」のは、そのためだったのだ。コメディからドロドロまで、路線は、プロデューサーの企画力に任されているという。
「時代がこうだからとか、視聴者が求めているからというだけで、路線を決めることはありません。それぞれ、違う人生観や視点を持つプロデューサーが、意欲を持って『自分でやろう!』と思う企画でないと、結局、視聴者に届かないんです」
そう語る鶴さんの、意欲の結晶のひとつが、『真珠夫人』だった。
「最初の企画会議では『古すぎる』とか、いろいろ言われましたよ。でも、僕は無理やり結婚させられたヒロインが、純潔を守り抜く、という物語を世に出したかった。今は、性が開放的とかいわれますが、日本人の心の中には、今も愛や恋についての奥ゆかしさが残っているんじゃないか。それを問うてみたくて」
作品の準備は、放送の10カ月前には始まる。無事、完成にこぎつけるまで、制作側にもさまざまなドラマが。
「撮影に入る前に、最低でも3週間分は脚本がないといけないのに、僕が最初に手がけた『ラスト・フレンド』は、1週間分しかできていなくて。ヒヤヒヤでした。『風のロンド』は’95年の作品。オウム事件などが起きて、報道一色の中でのオンエアになりました」
ハードなスケジュールや激しいシーンに取り組む、キャストの調整役も、鶴さんたちの仕事だ。
「ここでは話せないことも、いろいろありましたよ(笑)。でも、脚本家にとっては、これほど“人間”を書き尽くせるドラマはないし、俳優にとっても、これほど演じ尽くせるドラマはないんです。みんな書きたい、演じたいという“業”がある。こんなにいい現場はないですよ」