南海キャンディーズのしずちゃんこと山崎静代(34)のボクシング専属コーチだった梅津正彦さんが23日、悪性黒色腫のため亡くなった。44歳の若さだった。実は今年2月、迫りくる死を予感しつつ、なお生きる希望を捨てなかった梅津さんは、本誌に“遺言インタビュー”を遺していた――。
「健康な人には、僕のいまの気持ちは正直、わからないと思うんですよね……。余命があと30年あったはずが、突然、1年しかなくなった。僕の1日は、普通の人の30日分なんですよ。だから、僕が子供と長く遊びすぎると、カミさんが『もう、いい加減にしなさい』と叱るけど、『お前はこれから子供と何十年も一緒にいられるんだろ? 俺はあとどれだけいられるかわからないんだぞ!』って、逆ギレですよ(笑)。そんなわがままな亭主ですけれど、カミさんはいま、やれることは全部やってくれています」

 照れながらも、闘病を献身的に支えてくれる奥さんへの感謝を口にした。
「そろそろ“死ぬ準備”もしておかなきゃと思っています。息子は5歳で、本当に可愛い盛りです。でも、来年の6歳の誕生日までは、自分が生きられるかわからない。ランドセルを背負う姿を見るまでは、と思ってはいるんですが……。それで、息子の毎年の誕生日に贈る手紙を書いておこうと思って。6歳用、7歳用、8歳用…と20歳くらいまでね。ずっといま書いているんです。だって、死んじゃったら書けないですから(笑)」

 梅津さんは、一転、顔を曇らせてこんな揺れる胸中も吐露していた。
「いまも、実は健常者のふりをしているだけなんですよ。やっぱり、俺は末期がん。だから、ときには本当に発狂したくなったりもするんです。それが、いまの偽らざる心境なんです」
 インタビューをした夜、記者の携帯電話に梅津さんから、留守番電話メッセージが残されていた。インタビューで言い残したことを、わざわざ電話してきてくれたのだ。
「ボクシングに、僕は人生を教えてもらいました。その素晴らしい世界を俺もまた誰かに伝えたくて、いままでやってきた気がします。そのなかで出会えたさまざまな人たちとの交流が、僕にとっては宝でした。“本当にありがとう”。僕はボクシングにそう言いたいですね」

 人を惹きつけるその限りない情熱は、しずちゃんを始め“教え子たち”に脈々と受け継がれていくことだろう。

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