デビュー当時のいじめ、ファンに刺されて重体、そしてがん……「そんな体験が、私たちを強く明るくしてくれた」と語る、おん年75歳の双子デュオ“こまどり姉妹”。その“どん底人生”を2人が語ってくれた。
並木栄子(以下E)「デビュー前からつらい思いはたくさんしてきたわね。上京して流しをしていたら、周りの流しの先輩たちに嫉妬されて、醜聞を流されたり嫌がらせされたり。スカウトされてレコード会社に行ったのに、“流し出身”というだけで、差別されて落とされたりもしたし」
並木葉子(以下Y)「デビューしてからも、偏見や差別は続いたの。あるステージでは、興行主に『お前たちみたいな歌手は二流にすらなれない』と宴会場でなじられたことも。私たちは悔しくて、『一流の歌手とは何か』と先輩たちのステージを研究して、必死で勉強したわ」
E「28歳のとき、私に結婚を迫っていた熱狂的なファンが、ステージ上で間違えて妹を刺したんだけど、さすがにそのときは歌手をやめようと思ったわ。でも同時期に、事務所の経理がお金を持ち逃げした事件が起こったの。税金を納めないといけないから、やめられなくなっていった。私たちに脱税疑惑がかけられたけど、それも私たちを潰そうとしていた事務所が手を回したとか、いろいろ裏もあって……」
Y「不幸といえば、私は生まれつき体が弱く、7歳のとき流行性の脊髄脳膜炎にもなったの。30人中28人が亡くなるなか、運よく生き残ってね。小児ぜんそくにも苦しんだし、33歳でがんにもなった」
E「でも、2人とも歯は丈夫。うちは貧乏だったから、小さいころからのお昼ご飯は、お母さんがいった大豆。大豆や身欠きニシンなどの硬いものを毎日食べていたから、歯が強くなったんだと思うのね」
Y「実は私たち、生まれつき2人で1人分の腎臓を分け合っているの。透析になったら大変だから、塩辛いものはダメだし、塩分を排出しないといけないから、若いころからサウナ通いは続けている」
E「人の陰口や悪口を言わないというのが私たちの原点。そんな暇があるなら、自分のことに目を向けたほうがいい」
Y「たくさんの不幸に遭って地獄を見たから、死ぬこと自体は怖くないんだけど、この世が好きだからね(笑)。生きるための努力はどんなことでもしてきたという自負はある。それが今日まで明るく生きてこれてる元気の源かもね」