「私は、道徳とか、常識とかそうしたものを超えたところに、物事の“真実”があると最近、感じます。男女の愛もしかりで、道徳や世間の常識といった“非常にお行儀のいい世界”では“真実”をすくい上げるのは難しい」

 こう語るのは現在、NHK総合テレビで放映中の連続ドラマ『ガラスの家』(毎週火曜日夜10時~)の、オリジナル脚本を担当する大石静さん(62)だ。

 同作は、父と長男が財務官僚、次男が司法試験浪人中という男3人の「澁澤家」が舞台。そこへ父の再婚相手・玉木黎(井川遥)が嫁いでくる。長男の仁志(斎藤工)が「美しき魔物」と評する黎の出現によって、3人の男たちは次第に、心に押し隠していた欲望に目覚めていく……。

「“魔性の女”という言葉がありますが、こういう女性は生まれたときから、何か人を狂わすものを持っていると思うんです。また、魔性の人は女性だけではなく男性にもいます。『ああ、見るからに近づいたら危ない。必ず私が傷つく』と感じる人が」(大石さん・以下同)

 大石さんは、’86年にテレビドラマ『水曜日の恋人たち』で脚本家デビュー。代表作に『ふたりっ子』『功名が辻』など多数。代表作『セカンドバージン』は高視聴率を記録。映画化もされた。

「『セカンドバージン』も『ガラスの家』も、実際に経験した恋愛をそのまま描いてはいませんが、私の人生が反映されているといえます。私は『男と女は寝ないと始まらない』と思っています。寝て初めて、相手のことが本当に好きかどうか、一緒に生きていたいかどうかがわかるんじゃないかと、私は思っています」

 私生活では、25歳のときに8歳年上の舞台監督と結婚した。
 
「誰でもいいから結婚したいと思っていましたね、あのころは。夫と結婚する前は、既婚者と苦しい恋をしていて、ズタボロだったものですから。当時の彼に、途中で奥さんがいることがわかって、もう頭が変になりそうになって、『結婚して』『結婚して』って1万回ぐらい言ったんじゃないかしら。相手はそれがうっとうしかったんでしょうね(笑)」

 その彼は、大石さんを捨て、妻のもとへ戻った。大石さんは「息ができないほど泣いた」という。

「そして、『だれでもいいから次に出会った人と結婚しよう』と思って、夫と結婚しちゃいました。ほんとバカですけど、とにかく“妻の座”がほしかったんですね」

 結婚後しばらくは専業主婦をしていたが、すぐに「私がほしかった妻の座って、こんなにもつまらないものなのか」と気づいたという。今でも「私は何のためにこの人と結婚したのかな……」と、思う瞬間がしばしば。

「それでも一緒にいるのは、あのとき、ひょっこり結婚してくれた恩義、仕事を持って自由に羽ばたけと背中を押してもらった恩義、いつも私の応援団でいてくれた恩義とかがあるからでしょうか……。夫も年を取ってきたし、うちは子供がいないから、夫を看取るのは、私の最後の仕事だと思っています」

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