9月18日、一躍、全米でその名を知らしめた日本人がいた。米NBCの人気オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』で、日本人初の優勝を遂げた蛯名健一さん(39)だ。優勝賞金は、100万ドル(約1億円)。まさにアメリカン・ドリームをかなえたといえる。

 蛯名さんは20歳のときに渡米。大学に通いながら独学でダンスを学び、卒業以降ずっとこの道一本で生きてきた。今回のオーディションが始まったのは今年6月のこと。蛯名さんが、体から落ちた首を手で受け止めるパフォーマンスや映画『マトリックス』スタイルのダンスを披露するや、審査員と観客は大喝采。3カ月間で5度のステージを勝ち抜いて優勝した。

「じつは一気に観客が沸いた“あの首”は、’95年の『欽ちゃんの仮装大賞』優勝作品のトリックをお借りしているんです(笑)。もともと今回は、『少し仕事のオファーが増えればいいな』という軽い気持ちでの出場だったので、まさか優勝までするとは……」(蛯名さん)

 蛯名さんは、すぐに日本にいる妻に電話で優勝を報告した。そのときのことを、妻・和歌子さんはこう振り返る。

「彼に『おめでとう』と言った瞬間、涙があふれてきて何も言えなくなってしまいました。無収入だった決勝までの3カ月間もそうですが、これまでずっと“考え込んでいる姿”をそばで見てきましたから。彼は『どうすればお客さんをアッと言わせられるか』ということに四六時中没頭していました。食事中もベッドの中でも。あの努力がやっと実ったと思ったら、胸が詰まって……」

 さて、やはり気になるのが賞金の使い道だが?

「税金を引かれたら残るのは半分以下。しかも40年の分割払いなので、入ってくるのは毎年100万円程度なんです。でも、これはすべて貯蓄にまわすつもりです。ダンサーは会社員と違って人気商売なので、収入もアップダウンがありますからね。何より、このお金は娘、りんかのために使いたいと思っています」(蛯名さん)

 9月29日から全米ツアー公演が始まる蛯名さんは、その前に2日間だけ帰国した。その理由を「小学1年生の娘の運動会があるんです。これだけは、絶対に行かなくっちゃ!」と子煩悩なパパの顔で話した。

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