「『あまちゃん』ではわずかな出番でしたから、誰も気がつかないだろうと思っていましたが……。大人気ドラマの両方に出演したことは光栄ですが、少し図々しい気がして(笑)」
堺雅人(39)演じる半沢直樹の同期の銀行マン・近藤直弼役を好演した滝藤賢一(36)。『あまちゃん』でも、主人公のアキを取材する雑誌記者役で出演。国民的ドラマ2作品に登場した快挙に話を振ると、目をまん丸に見開いて恐縮した。
「映画監督でもやろうかな」と、高校を卒業後に上京したが、19歳のときに塚本晋也監督の映画『バレット・バレエ』の出演者オーデションに合格。その後、友人に誘われ、仲代達矢主宰の俳優養成所「無名塾」に入塾する。
「無名塾は舞台が中心。映画をやりたい僕としては戸惑いましたが、映像の世界に入ることを夢見ながらも、日々、役者としての修業を積ませてもらいました。3年の塾生時代を含め、役者として鍛えてもらった10年間は、今の僕の土台になっています」(滝籐・以下同)
俳優人生を大きく変えたのが、堺雅人との初共演作『クライマーズ・ハイ』。若手新聞記者が壮絶な航空機の墜落現場を取材し、正気を失っていく役を演じ、高い評価を得た。その翌年、32歳で栄養士の女性と結婚。現在は、3人の男の子の父親でもある。
「『クライマーズ・ハイ』のあとも、深夜のレンタルビデオ店でバイトをしていました。2年前までは、多忙な1カ月のあとに、翌月は仕事ゼロなんてことはザラでしたよ。でも、僕に仕事があってもなくてもまったく変わらない妻に、助けられました」
売れない時代を金銭面で支えてくれた両親にも、感謝が尽きない。
「最近、母と電話をしていると、切るときに必ず『みんな応援しているからね』と言うんです。最初は近藤に対しての応援かと思いましたが、僕自身への励ましですよね。32歳まで、親のスネをかじる息子でしたから……」
『半沢直樹』で人気役者になった滝籐だが、その人気が、これからは試練にもなる。
「はやく近藤という役を壊さなければ、次の仕事ができません。役者はいつ消えてもおかしくない。その怖さに、当たって、ぶつかって、乗り切るしかないんです。そうやっていつか、親から施してもらった『愛』を息子たちに返していけたら、いいですね」