「横綱・白鳳関は、以前から霧島市の“観光大使”をしていらして、その関係で市から紹介していただきました。昨年の九州場所後に、市役所にご挨拶にみえたときに」

 こう語るのは、鹿児島県霧島市に住む水流添日向(つるぞえ ひなた)くん(6)の母・二三代さん(42)だ。夫と離婚し、24時間営業のスーパーマーケットで働きながら、女手ひとつで4人の子供を育てている。末っ子の日向くんに異常が見つかったのは、小学校入学直後のことだった。

 大学病院で検査をすると「拘束型心筋症」だと判断された。心筋症のひとつで、心室の壁が硬くなり、拡張不全になる原因不明の難病だ。突然死のリスクも高く、発症から5年以内に7割近くが死にいたるというデータもある。発症の頻度は約50万人に1人で、厚生労働省が特定疾患に指定している。現在、有効な治療法はなく、悪化した場合、唯一の救命手段として行われているのが心臓移植だ。

「今は普通に生活しているように見える日向ですが、担当のお医者さんによると、2〜3年のうちに必ず悪化するそうです。なるべく早く心臓移植の手術を受けたいと思っておりますが……」(二三代さん)

 日向くんを支援する「つるぞえひなた君を救う会」(鹿児島県霧島市)の事務局によると、「お母さんは海外での心臓移植を決意しましたが、公的サポートはいっさいないため、莫大な費用がかかるんですね」。1月16日現在の募金総額は約4,700万円。移植費用にはデポジットに加え渡航費や滞在費など1億4,500万円が必要だ。まだ1億円近く足りない。

 こうした状況に救いの手を差し伸べたのが、第69代横綱・白鵬翔関(28)だ。横綱の個人 マネージャーが語る。

「2月2日に両国国技館で、横綱のライフワークである子供相撲大会『白鵬杯』が開催されますが、当日、会場で日向くんへの募金活動を行います」

 今年で4回目となる『白鵬杯』は、横綱の母国・モンゴルに加え、韓国、中国から約500人の小・中学生が参加するが、参加費は無料。これまで、選手や審判員など参加者の交通費や宿泊費、会場費など、『白鵬杯』の運営は、ほとんど横綱の“ポケットマネー”でまかなってきたという。前出のマネージャーが続ける。

「ご存知のように近年、相撲界には逆風が続いて大相撲人気は下降気味。それもあって横綱は“国技”である大相撲の将来に危機感を抱いています。それと、横綱には『子供は宝だ』という気持ちが非常に強い。そこで、子供と大相撲の将来のために、自分の名前をつけた子供相撲の大会をやろうと考えたんです」

 白鵬関に日向くんと「白鵬杯」への思いを聞いてみたかったが、初場所中でかなわず、かわりにマネージャーがコメントを寄せてくれた。

「自分には、“子供は未来の宝”だという思いが強くあります。微力ですが、そんな子供たちの力に少しでもなれれば、と思っています」

「つるぞえひなた君を救う会事務局」
電話 0995-58-2536
ホームページ http://hinata-kun.net/

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