隔週連載“中山秀征の語り合いたい人”。今回は『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』等、個性的な衝撃作を世に送り続ける映画監督、園子温氏(52)。’93年、秀ちゃんが司会をしていた『もっと過激にパラダイス』(NHK・BS)に園監督が出演して以来、20年ぶりの再会となった。

園「4畳半のアパートで暮らしていた激貧・最底辺の時代が、僕の映画の根本。大手映画会社のスタジオでたくさんの人に頭を下げられたりすると、何か大切なものを失いそうな気がするんです。だから実は僕、水道橋博士に手伝ってもらって、高円寺の舞台で芸人として漫才とコントをやらせてもらったんですよ。それで最近バラエティにもちょこちょこ出させてもらってるんですが、若手芸人ですから、テレビのADに『そこ邪魔だから』『どいてどいて』とか言われると『あぁ、これこれ!』って感じでワクワクしましたね」

中山「普通はもう2度と苦しい時代には戻りたくないと思うのに、監督はあえてジャンルを変えてキツいところに飛び込みますね」

園「僕は50歳を過ぎて、人生の折り返し地点でUターンしたので、もう1回振り出しの20歳くらいに戻って、あのころのように自分に何が適しているのか試そうと思って、ビジュアル系のバンドも組んでみたんです。5月にライブをやるので、今練習してるんですよ」

中山「え、なんでまた急にビジュアル系?」

園「僕の映画の音楽は、ほとんど自分で作ってるんですよ。若いときに音楽がやりたかったのに、なせか映画監督になってしまったので、悔しいから映画の中の曲は作詞も作曲も自分でやってるんです。だから、芸人をやるってほどバンドは突拍子もないことではない。メンバーにもカッコよくレッドやネガティブって名付けて、僕も“シオン”なんですけど、濁音にして“ジオン”にしようかな。悪魔的でしょ?アホかなと思いますよ(笑)。でもそのアホなことをやりたいんですよね。あと、劇団を旗揚げしたい。とにかくやれることを今全部やってみようと思います。でも今年は映画を5本撮るので、それも映画監督としては異常事態です」

中山「売れっ子監督ってことじゃないですか」

園「いやいや、オファーを全部受けていたら、5本になっちゃって。でも、それくらいのほうがいいんですよ。なぜかというと、去年公開していた映画『地獄でなぜ悪い』の撮影中、同時に1冊本を書き上げなきゃいけなかった。撮影の休憩や照明を替える合間に必死で書いて、こんな感じでいいものが書けるのかなとも思っていたのですが、切羽詰まった感じが評判よくて」

中山「時間があったらあったでいいものが作れるかというと、そうではないんですよね」

園「質より量ってことです。質を生むために1個1個にこだわっているより、量産したほうが、自分の判断基準とか価値観という狭い観点以外からポンッと新しい何かが生まれる気がするんです。それだけやったうえで、極論を言えば2本はいいけど3本ダメな映画ができてもいいと思ってるんですよ」

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