テレビ局の中で「5強1弱」と呼ばれていたテレビ東京が、快進撃を続けている。今年、開局50周年を迎えたが、昨年4〜9月の経常利益が前年度比92%増で、民放トップの伸び率となった。

「かつてテレビ東京は、視聴率の低さから“番外地”と呼ばれていました。けれど今、時代の流れがテレビ東京に脚光を浴びさせているのです」

 そう語るのは、『テレビ番外地—東京12チャンネルの奇跡』の著者・石光勝さん。同局開局から、番組作りに携わり、元編成局長も務めた石光さんが、テレ東一人勝ちの背景を分析する。

「開局当時1日5時間しか放送できない時期もありました。カネ、ヒト、モノがない。他局のようなプロ野球中継、ドラマ、歌番組はできません。有名タレントもギャラが高くて使えない。当時、番組予算も他局の3分の1から4分の1でした。しかし、条件が厳しく制限があると、人は発想が湧くものです」

 そこで生まれたのが、ゴールデン初の「グルメ番組」だった。

「老いも若きも職業も関係なく、人間の生きる本性にかかわるのが『食』と、苦肉の策で作ったのがグルメ番組でした。視聴率も稼ぎ出し、“苦しいときのラーメン頼み”といわれるまでになりました。オールロケの低予算で、お店も宣伝にもなり、一石二鳥。有名人が出なくても番組が成立しました」

 ここから“素人いじり”の金脈につながっていった。

「近年、視聴者の年齢層が高くなっていますが、テレ東は最初から中高年の方に向けた番組作りをしていました」

 その姿勢は今もブレない。また、長時間スペシャルをレギュラー枠化したのもテレ東が初。

「あらゆるジャンルがOKでこれは月に4回は勝てなくてもいいから、1勝3敗を目指す発想。映画監督の今村昌平さんが企画を持ち込んでくれて賞も取りました」

 ビートたけし、タモリ、さんまらもブレイク前に出演。

「伸びそうな新人を起用する。全国区になり、ギャラと実力がアップするとテレ東の手に負えなくなる(笑)。気持ちは寂しいが、“先物買いをして、手ばなす”。12時間などの長時間番組を作ったのも省エネになるから。テレ東には、こんなパイオニア精神のDNAが今も受け継がれています。条件の悪さは、逆転の発想で違うものを生み出せます。ナンバーワンになれないなら、オンリーワンになれるチャンスがあるんです」

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