今年上半期の騒動として印象に残った“現代のベートーベン”こと佐村河内守氏の「ゴーストライター騒動」。それについて、江原啓之さんはこう語る。
「私たちは騙されていたと怒るべきなのでしょうか? 実はこの騒動は、騙されていたすべての人の教養が問われたのです」
「彼の自称していた背景やそのドラマ性に惑わされ、作品への評価を上げたり下げたり翻弄されることの愚かさを露呈させた騒動でした。ある意味、そこには同情といったフィルターがかかり、正当な評価を妨げていたのでは? 音楽を聴く耳があれば、嘘は見抜けたはずです」
「『騙された!』と怒る人に問いたいのは、最初から『真実ではない』『フェイクかも』と気づきながら受け入れている事象が、ほかにないかということ」
「たとえば、ブランドの模造品に騙されるのも同じ。よく吟味もせず、『安いから』とすぐ飛びつく人もいます。本人がそれで納得していればいいのだと思いますが、あとになって『偽物を掴まされた』と怒るのは筋違い」
「むしろ、自分に見る目がなかったのだと恥じ入り、安易に惑わされ翻弄された愚かさに気づく機会だったと思うしかないのです」