「私が本に書いた“麻酔科医とは”という説明を、鈴木京香さんは映画のなかできちっとお話しされていました。本物の医師でも、あれだけ上手に麻酔科について説明できる人は、いないんじゃないかというほど素晴らしかったです」

 こう明かすのは、医師の川村隆枝さん(65)。彼女は鈴木京香(46)の主演映画『救いたい』(11月22日公開)で医療監修を務めた、国立病院機構仙台医療センターの麻酔科医長。映画は川村さんの体験を綴った著書『心配ご無用 手術室には守護神がいる』を原作としており、鈴木は川村さん自身がモデルの麻酔科医(隆子)を演じた。映画の現場で鈴木を指導した川村さんは、撮影秘話をこう語る。

「マスクを着けた鈴木さんが目元を引き締め、颯爽と手術室に向かう姿はカッコよかったですね。フェイスマスクの持ち方、喉頭鏡の扱い方、動脈・静脈への針の差し方など、他の麻酔科医に見られても、顰蹙を買わないようにかなり細かく指導しました。鈴木さんは『難しいですね』と言いつつも、本番ではキリっとした麻酔科医になっていました」

 撮影の合間、川村さんは鈴木と2人だけの“打ち合わせ”をおこなったという。

「鈴木さんからは『隆子と隆枝で飲みに行きましょう!』と誘っていただきました。バーに行って『お疲れさまでした』と鈴木さんがお好きなシャンパンを開けて、いろいろお話ししましたね。働く女性の悲哀といいますか。映画にも『私は見た目ほど強くないからね』というセリフがあるんですけど、第一線で働く女性は強いイメージがあると思います。でも誰にでも悩みはあって上になればなるほど、下に見せちゃいけない弱さもある。『そういうところってあるよね』という話をしました」

東日本大震災の後、鈴木は故郷に戻れなかったことを悔やんでいたという。

「宮城出身の鈴木さんは『なかなか慰問することもできなかったので、今回の映画の仕事で東北に恩返しができればうれしい』とおっしゃっていました。鈴木さんには、麻酔科医を演じるに当たって『目力が大事です。優しくも厳しく見守っているようにしてください』とアドバイスしました。医療シーンではマスクを着けているので、ほとんど目だけで演じなければなりません。彼女は悩んでいらしたけれど、すごく上手に演じられたと思います」

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