3年連続で『NHK紅白歌合戦』に出場する美輪明宏さん。今年は美輪さんがナレーションを務めた連続テレビ小説『花子とアン』の挿入歌として流され、大反響を呼んだ『愛の讃歌』を歌う。その美輪さんに、年末恒例、愛の説法をしていただいた。

「恋と愛とは違います。恋というのは、自分の性欲を満たすため、自分のために相手が必要だというエゴなんです。それが恋から愛に入ると、相手本位になりますから、自分のエゴはどこかに行ってしまう。そうするともう怖いものはなくなります。

 昔の人は“恋”と“愛”をちゃんと分けていました。それが日本語の素晴らしいところでもあるんです。たとえば、英語の場合は、loveとlikeだけですね。likeというのは、好き、好意を持っている。loveというのは、愛と恋を含めてloveです。

 日本語の場合、“恋愛”といって、“恋”が先にあって“愛”が後にくる。やがて“恋”が焼け落ちて、セックスも何もなくなる。そして燃え上がるような恋慕の気持ちもなくなる。しかしその後、同胞の同志愛のような“愛”が芽生え、人類愛でいちばん美しく奇麗なエキスだけが残れば、それは純粋な“愛”となります。それが最近では、“恋”だけで終わって、“愛”までいかない人がほとんどなのです。

 好きになった相手とお付き合いをしたときに、“自分はこの人に恋をしているのか?愛しているのか?”……まずはセックスを引き算して、冷静に相手を見ることです。その人からセックスのテクニックとセックスアピールを引いたら何も残らない。マイナスだらけという人が、結構多いですから(笑)。そして相手の容姿、容貌も引き算する。それで何が残るか。残ったエキスが素敵だったら本物。“その人とずっと一緒にいたい”という気持ちになれば、“恋”から“愛”へと変わっていきます。

 相手も自分の性格や才能、ちょっとした仕草などを評価してくれているとわかれば、どんどんあなたのことが好きになっていくはずです。お互いが人間的な魅力をトータルして好きになることで、“自分のことを人として認めてくれている、ありがたいなぁ”という気持ちになります。

 引き算をしたら、マイナスだらけでプラスが何もなかった……これでは排せつ行為と同じで、トイレを借りているだけ。最近の人たちの“恋愛”は、ほとんど逆から入っているからうまくいかない。つまり、“恋愛”の出口と入口を間違えているということです」

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