「シャーロットとは先日、会ったばかりです。役に打ち込んで、繊細に演じていました。朝ドラは半年間の長丁場。肉体的にも精神的にもスタミナが求められます。プレッシャーで胃が痛くなったりしたようですが……」

 まるで娘を語る母親のような口調で、そう話すのは奈良橋陽子さん(67)。彼女は、NHKの連続テレビ小説『マッサン』で、エリーを演じるシャーロット・ケイト・フォックスをNHKのオーディションに紹介した人物。

 陽子さんの肩書は実に多彩。英会話スクールMLS共同設立者、役者育成のアップスアカデミーを主宰。作詞家、舞台演出家、映画監督、プロデューサー……。ドラマや映画の配役を担当するキャスティング・ディレクターとしての彼女は、ハリウッドからも一目置かれる存在だ。 

 トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』(’03年)で、渡辺謙をキャスティングし、渡辺、役所広司、工藤夕貴らが出演した『SAYURI』(’05年)も担当。『バベル』(’06年)では、菊地凛子を世界に送り出している。

『マッサン』のキャスティングの手伝いを始めたのは昨年秋。「次回は朝ドラ史上初の外国人ヒロインを考えています」と、NHK関係者から打診されたのだ。スカイプで面接し、その後、ロサンゼルスでオーディションをした。

「シャーロットは日本語が全くできず、日本のこともしりませんでした。でも、ロスで、朝から晩まで日本語のレッスンやカメラテストをしましたが、シャーロットはひたむきで、涙がこみあげてくるほどの迫力なんです。日本語なんて今はできなくていい。半年の長い撮影のなかで、少しずつ上達していけばいいと思うようになりました」(奈良橋さん・以下同)

 直感は大当たり。シャーロットは、初の外国人ヒロインの大役を見事に果たしている。また、ハリウッドで日本人のキャスティング・ディレクターとして認められた陽子さんによって、映画『終戦のエンペラー』(’12年公開)などの日本と世界をつなぐ作品も次々生まれている。次回の仕事は、アンジェリーナ・ジョリー製作の戦争映画のキャスティングだ。

「日本人を一元的な悪役にしたくないというアンジーの提案に、それならばぜひ、役に立ちたいと思いました。日本人の素晴らしさを海外に伝えたいし、シャーロットのように、日本につなげてそのよさを知ってもらいたいと思います」