派手さはない。どこかナイーブで、自然体で、透明。けれどそこに、強い信念が透けて見えるようだ。今年度、映画賞6冠受賞の池松壮亮(24)を知る映画4作品を紹介しよう。

『紙の月』
 宮沢りえ演じる平凡な銀行員・梅澤梨花と不倫関係に陥る、年下大学生の平林光太。前半の無邪気で屈託のない笑顔が、見ている者を不安にさせる。物語が展開するにつれ、自分の欲や願望を満たそうと梨花の表情をうかがいながら甘えてみせ、女を翻弄するズルい男の一面をあらわにしていくが、ひどいやつだと眉間にしわを寄せながら、けれど許してしまう女心の複雑さを感じずにはいられない。

『海を感じる時』
 池松演じる高校3年の洋は、後輩の恵美子(市川由衣)へと大胆にキスを迫る。「決して君が好きなわけじゃない。ただ、キスがしてみたい」と吐き捨てるような冷淡さ。心ここにあらずな無表情、物憂げに遠くを見つめる視線、気だるい空気感。あるのは肉欲だけだった洋が、恵美子と肌をあわせるうち、愛や狂気を覚えていくその感情の変化に、思わず固唾をのむ。

『この世で俺/僕だけ』
 元バンドマンの破天荒なサラリーマンと、ふとしたきっかけで一緒に逃避行を繰り広げることになった不良高校生・黒田甲賀を池松が演じている。感情を爆発させ怒り狂った顔、粗暴に衝動的に駆けまわる姿。ふだんの池松からはイメージしがたい“激動”の部分に、とにかく圧倒されてしまう。

『ぼくたちの家族』
 妻夫木聡(34)演じる浩介の弟・若菜俊平を演じる池松。絆など関係ないと突っぱね、家族と距離を置き、ひとり飄々と暮らしていた俊平という男は、池松本人なのではないかと思うくらいに、言葉や間、しぐさすべてにリアリティが宿る。母の病気をきっかけに、家族に対する振る舞いは変わっていくのだが、そこに唐突さや不自然さはない。母を見守る表情も、兄と話をする声色も、“心の変化”というよりもっと繊細な“揺れ動き”という表現がふさわしいのかもしれない。

 どの作品でも違和感なく、心にすっと入ってくる。あらゆるキャラクターの、さまざまな心の機微を“表情”でみせる彼から、目が離せない。

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