城に佇むことが好きであり、城の空気を吸うことが好きなんです!
北陸3県は縁があってよく訪れるところです。とくに冬場は三国(福井)へ旬の蟹を食べに行くし、夏にはかならず富山・八尾の民謡行事「おわら風の盆」に参加します。そのたびに丸岡城や金沢城など、北陸の城めぐりをするのが楽しみになっています。

僕は100の城があれば100の違った空気感があり、すべてに違ったよさがあり、歴史があり、見どころがあるものだと思っています。だから城に順位をつけたくないのですが、今回はおすすめという形でベスト3を紹介します。

やはり北陸3県の城でダントツなのが丸岡城です。北陸唯一の現存12天守であり、日本最古の天守閣ともいわれています。見た目に派手さは一切なく、地味で本当に小さな城です。それでいて質実剛健で、古武士のような佇まいが感じられます。高校生のとき、僕が城の旅をしているのを勘三郎君(故・中村勘三郎)が聞きつけて、一緒に行きたいと言うので、鉄道二人旅で丸岡城に行きました。丸岡城を前に、彼が「この城いいね、渋いね」と言ったのを覚えています。子供たちを連れていったときも、きっと「寒いのに、どうしてこんなところへ連れてきたの」と怒るんじゃないかなと勝手に想像していたんですが、「父さん、この城いいね」と言われ、少し驚きました。丸岡城のその控えめな佇まいには、人の心に響く何かがあるのかもしれません。

それに続くのが、金沢城です。戦後は金沢大学のキャンパスとして利用させてきましたが、長期計画のもとで大学を移転させ、金沢百万石の城を復活させています。現存していた石川門、三十間長屋などに加え、すでに菱櫓や五十間長屋などは木造で立派に再建されました。日本広しといえども百万石の城はここだけなので、まだ再建の途中ですし、経過も含めて楽しみです。

そして最後のひとつが中世の館跡ともいえる一乗谷城(朝倉氏遺跡)です。400年以上もの間、戦いに敗れた城や館の敷地がそのままの状態で残っている奇跡のような場所です。しろ、屋敷跡の正面に立ち眺めていると朝倉氏の雅びだった当時の暮らしぶりが鮮明に浮かび上がり、感じられるのです。

日本全国には城が本当にたくさんあります。県庁所在地で明治維新のときに城下町ではなかったところは12ヶ所しかありません。残り35ヶ所は城下町で、そこには今もかならず城(城跡)があります。北陸でいえば福井城がそうです。しかし立派な城なのですが、今では石垣の中の本丸部分に県庁舎や県警本部などが建ってしまっています。これは城好きな僕にとっては残念なことです。なかに入って見られないのです。以前、福井県知事に会ったとき、つい文句を言ってしまいました。「非常に残念です」と(笑)。

そんな感じで城のことになると夢中になってしまう。城に行けば4時間でも平気で見ていられるから、人を誘って一緒に行けません(笑)。僕は、人間が知恵を絞って土地や山の地形を利用して築かれている、人間と自然の合作で造られている城の様を見たい。そして城それぞれが放つ独特の空気のなかに佇みたいんです。だから城に詳しい人でも、語りたがる人と一緒に行くのも嫌。うるさいと思っちゃう(笑)。それほど城には魅力があるんです。

初めて自分の力で城を見に行ったのは、中学2年生の春休み。鉄道好きの友人と一緒に行った松本城でした。初めて見た松本城は衝撃的で本当にきれいでした。だから今でも鉄道で城を見に行くことには思い入れがあります。味があるなと。北陸新幹線で金沢城…、ぜひ一度行ってみたいです。

(FLASHスペシャル グラビアBEST 2015年3月25日増刊号)

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