「1次オーディションのときに、これは落ちたなって。『自分の殻を破れてない!』と言われたり、オーディションというより、自分の人生を振り返らせられる時間のようで、やっぱり芸能界は甘くないんだなと思って泣きました」

 宮部みゆき原作の映画『ソロモンの偽証』(成島出監督)で主人公を演じている藤野涼子。出演歴が“エキストラの通行人”のみだった彼女は、1万人のオーディションから主人公・藤野涼子に抜擢された。「この映画で演じた感情を忘れないように」と役名をそのまま芸名にし、女優として歩み始めたのだそう。

「本格的に女優という道に進みたいと決めたのは1次オーディションのとき。でも、周りには子役からやっている人もたくさんいたので、いまはとにかく自分の得られるものを得ようという気持ちで挑んでいました。主演が決まったときは、父が落ち着いて『主演だよ』と言ってくれたので、動じずに受け止められたんです。父が落ち着いていなかったら、これからどんなことが待ち受けているのだろう……とパニックになっていたと思うので、自分にとって両親はいちばん大きな存在なんだとあらためて感じました」

 映画の“後篇・裁判”は、真実を知るために、生徒たちだけで学校内裁判を開廷。裁判の中心となる藤野涼子は、中学生とは思えない落ち着いた印象だ。声を低く演じるよう監督から厳しく演出されたというが、このインタビュー中もそのまま。劇中の藤野涼子が目の前にいる感覚に。

「撮影が終わったあとに学校へ行って、この声のトーンで話すと『怒ってるの?』とか『怖い』と言われるんです。なので学校ではなるべく本来の感じで話していたら、その間にアフレコがあって、監督に『涼子の声はそんなに高くない』と言われてしまって……。そのときに、もうずっとこの低い声でいこうと決めました。いまも友達には『怖い』と言われています(笑)」

 その後篇はどんな作品に?

「実際に300人の傍聴人の前で演技をしているので、スクリーンでもその緊張感を味わっていただけると思います。前篇でモヤモヤしていたところに光を当ててくれるような、最後にはスッキリしていたたけるはずです」

 今作を終え、これからどんな女優になりたいか尋ねると……。

「いままで映画や本に触れる機会が少なかったんですけど、この作品を通して、その大切さを知りました。これから勉強して、どんな作品や役があるのかわかってから、目標を決めたいと思っています」

 キリリと低い声で話した。

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