「20歳くらいのときは、小林旭さんとお付き合いをしていました。旭さんは父に結婚の申し込みをしてくれたのですが、父が『あの子はまだ女優をしていかなきゃならないので、今は結婚させられません』と断わったんです。それから次第に旭さんとは疎遠になり、結局結婚はしませんでした。しばらくすると、旭さんの撮影現場に、(美空)ひばりさんがよくいらっしゃるようになった。当時、すでに大スターのひばりさんですから、車を降りずに、車の中から撮影を見ていらっしゃるんです。『あぁ、きっとこの方と結婚なさるんだわ』と思っていたら、案の定……」
そう語るのは、隔週連載『中山秀征の語り合いたい人』第38回のゲスト、女優の浅丘ルリ子さん。日活映画が大好きな中山が理想の女性だと言ってはばからない浅丘さんとの初対談は、あっという間に時間が過ぎていきました。今年で芸能活動60周年を迎える浅丘さんとのぶっちゃけトーク、スタートです。
中山「浅丘さんが石坂浩二さんとご結婚されたのは、30歳のときですよね」
浅丘「加賀まりこちゃんから『へいちゃん(石坂浩二さん)がルリ子さんのファンだから、一回会ってあげて』と前々から言われていたんです。そしたら、『2丁目3番地』(日本テレビ)というドラマで、共演することに。やたら私のそばに来るし、いろんなことをしゃべってうるさいし、いつも話が長いんですよ(笑)。でも、退屈はしないんですけど」
中山「相当好意があるのはわかりますね」
浅丘「あるとき、森光子さんを介して、へいちゃんとの結婚の話になったんです。森さんが『ルリ子ちゃんさえよければ、いいんじゃないの』って言ってくれて。その後、へいちゃんが倉本聰さんと一緒に、わが家へ正式な結婚の申し込みに来たんです。
中山「倉本さんも一緒だったんですか!連れてくる人もすごいですね!」
浅丘「倉本さんは『2丁目3番地』の脚本も書いてるので、仲がよかったんですよ。『結婚しても、女優を続けていい、むしろ遠慮せずにどんどん好きな仕事をしてほしい』と言われて、この人となら大丈夫だと思い、結婚を決意したんです」
中山「女優・浅丘ルリ子は順風満帆。一方、妻・浅丘ルリ子はどうだったんですか?」
浅丘「それができなかったのよ……。最初のころは靴下をはかせたり、ネクタイを選んだり、背広を出したり、新妻らしいことをいろいろやっていたの。でも、私もだんだん仕事が忙しくなって、私のほうが早く家を出たり、帰宅も遅かったり。へいちゃんが『もう僕のことはいいから、自由に仕事をしなさい』って言ってくれて」
中山「石坂さんは、浅丘さんには本当に女優として生き続けてほしかったんですね」
浅丘「本当に幸せなことだったと感謝しています。こんなに話のわかる人ってなかなかいないでしょ?『もういいかげんに妻らしくしろ』とか『ウチにいろ』などとは一切言わなかったですし、本当にラクでした」