カーテンコールの幕が開き、椅子に座った市川猿翁(75)が現れると、場内に拍手と歓声が沸き起こった。

‘03年に脳梗塞を患って以来、闘病を続けている猿翁。彼が昨年3月以来、久々に舞台に現れたのは8月8日の大阪・新歌舞伎座だった。その表情からは胸中は伺えなかったが、澤瀉屋の関係者は言う。

「猿翁さんにとって最近、辛いできごとがあったんです。実は、軽井沢の別荘を売り出すことになって……」

地元不動産業者のホームページには《南軽井沢で1千780坪の広大な敷地に本館・迎賓館・稽古場の大きな家屋が3棟も含む絶景物件が登場しました!》と、紹介されている。230平方メートルの稽古場までついており、販売価格は8千800万円だ。歌舞伎関係者は言う。 

「猿翁と、故・藤間紫さん(享年85)が軽井沢に土地を買ったのは’87年でした。別荘は2人の愛の巣というだけではありません。稽古場では、一門の合宿なども行われました。この地で、スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』や『オグリ』、『八犬伝』などの数々の名作が生れました。いわばスーパー歌舞伎の聖地ともいえる場所なのです」

“聖地”の売却を決めたのは猿翁の息子・香川照之(49)だった。澤瀉屋の後援者の1人が嘆息をもらす。

「香川さんは、“いまでは年に数日しか使わないのに、大きな別荘を維持するのは無駄だから”と、処分を決めたそうです。合理的な彼らしいといえばそれまでですが……。もともとこの別荘に対して香川さんは複雑な思いを抱いていたようです。紫さんのために猿翁さんは、香川さんの母・浜木綿子さん(79)と離婚しました。2人の愛の思い出が詰まった場所に、好意的にはなれないのも仕方がないでしょう」

売却にあたり、猿翁がこだわったことがあるという。

「(猿翁さんは)土地を分割せずに、いまある建物も有効利用してくださる方にお譲りしたいと、希望されています」(別荘の販売を手がける不動産業者)

 せめて亡き妻・紫さんと過ごした建物はそのままに――、猿翁には、そんな思いがあるのだろう。

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