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「浩二役の二宮和也さんとお仕事をするのは今回が初めてですが、共演初日に私のことを『吉永さん』ではなく『さゆりさん』と、名前で呼んでくださって『あらっ』と思いました。そこで、私も『ちゃんとお名前を呼ばなきゃ』と思って『二宮さん』ではなく『かずなりさん」』と。撮影中はずっと『かずなりさん』『さゆりさん』と呼び合っていました(笑)」

12月12日公開の映画『母と暮らせば』で、原爆で息子を失った母親役を演じた吉永小百合さん(70)。長崎での原爆投下から3年後、息子・浩二が亡霊となって自宅に現れることで母子の日々が再び始まる――という物語だ。吉永さんが浩二役を演じた『嵐』二宮和也(32)との“母子の日々”を振り返ってくれた。

 

「私には子供がいないし、母親の経験がありませんので、クランクイン前に二宮さんに『「嵐」でデビューする前のお写真を見せていただけませんか』とお願いしました。そうしたら、彼は、生まれたての、名前すら付いていないときの写真と3歳、5歳、それから小学校に入ったころの、7歳ぐらいの写真を持ってきてくださった。そのどれもが、もうかわいくて、かわいくて……。いまの彼をそのまま”ちっちゃい子”にしたような写真でした(笑)」

 

借りた写真を常に身近に置いておいて、幼少期の二宮を頭に思い描きながら、母親を演じる演技プランを立てたという。

 

「俳優さんとしての二宮さんは、ひと言で言うと”天才”です。山田監督がかなりむずかしい注文をお出しになっても、彼は、監督の意図するところを即座に理解して、監督の思いどおりに動くことができる。これは『天から与えられた才能』だと思いますし、彼は、音楽や踊りをやっていらっしゃるからリズム感が実にいい。一緒に演技をしていて、二宮さんのリズム感のよさは、とても心地よかったですね。それに、人間的にもとてもきちんとした方でした。たとえば、撮影開始が午前9時だとすると、彼は9時前にはスタジオに入って待っている。また、お昼ごはんのときにはスタジオの入り口で、私を待っていてくれて『お先にどうぞ』と。そういう優しい心遣い、気配りができるジェントルマンでした」

 

2人が演じた母子の“奇跡の再会”。だが、それは切なくも悲しい展開を迎えることになる。

 

「『母と暮せば』では母と子のありきたりな、なにげない日常がエピソードとして語られています。こうした日々の生活のなかで、人と人が心を寄せ合って生きていくことの大事さ――これが山田監督のテーマであり、みなさんに伝えたいことだと思います。ところが、そうしたかけがえのない日々を一瞬のうちに奪い去ってしまうのが原爆であり、戦争です。ですから、私は『戦争は絶対にしてはいけない。あってはならないことだ』という姿勢をこれからも貫いていきたいし、声を出して言い続けていきたいと思っています」

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