《源三郎さまは真田家の嫡男。私などに構わず、どうぞお家の名に恥じぬよいお働き……、ゴホッ、ゴホッ……》
NHK大河ドラマ『真田丸』で、信幸(大泉洋)の妻・こう役の長野里美(54)が夫に向かって言う決めゼリフだ。彼女は劇団「第三舞台」の元看板女優で、“小劇場の女王”と呼ばれていた。今回は三谷の指名で、大河に初出演した。
「三谷さんの舞台に2年続けて出させていただいたご縁で、去年、『大河ドラマに出ますか?』と聞かれて、『もちろん、出ます』と即答しました。正式におこう役に決まってからアドバイスを頂いたのですが、『病弱だが、体の弱さに自分で“酔って”いて、笑えるほど負のオーラを出していながらも、チャーミングで魅力的でかわいい』と……」(長野・以下同)
台本を読んで、「二言三言のやりとりの間で、これをどう表現すればいいのか、大河ドラマの枠からはみ出してしまいそうで、すごく悩みました」と彼女は言う。そして臨んだ初リハーサル。
「芝居について考えた末、きっとおもしろいほうがいいのかなと決心して、破れかぶれで、『ゴホッ、ゴホッ』どころじゃない『うぉーっ、うぉーっ』と演じたらみなさん笑ってくださったんです。それでもまだ不安で堺(雅人)さんに『これでいいのかな?』と聞くと、『真田家は自由ですから』と言ってもらえました。撮影本番では監督から、『(演技を)少し抑えてみましょう』と言われましたが、なかなか抑えられなくて……(苦笑)。大泉さんは、いっさいふざけてはいけないようで『この人は何?』という感じであっけにとられていました(笑)」
放送を一緒に見た家族の反応には戸惑ったという。
「夫(俳優・上杉祥三)と娘と3人で最初はそろって見ていたんです。私の『ゴホッゴホッ』の後、夫と娘が2人で顔を見合わせてシーンとなってしまって。どう思ったのか不安で私小さくなっちゃいました。放送が終わって1時間しても誰からもメールも電話もこなくて……。でも、三谷さんからは『あれでいいんです』と言ってもらいました。プロデューサーの方からも、『三谷さんが、おこうは長野さんでなくてはできない役』と言ってくださったと聞いてうれしかったですね」
毎回、台本を読むたびに、「これをやるの?」と、驚きの連続だそう。
「戦国ものでありながら、女性陣の草笛(光子)さん、高畑(淳子)さん、私とそれぞれ違うキャラクターを書き分けてありおもしろいんです。しっかりとした大河ドラマの物語の中で、私と大泉さんのコメディタッチのシーンは“箸休め”的なワンポイントだと思います」