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「私は同世代のなかでは、日本一、『暮しの手帖』を読んでいる自信があります!いま80代の母が10代のころから愛読していて、実家にはボロボロになった創刊号から、ほとんどのバックナンバーがそろっています。家にはいつも見える場所に『暮しの手帖』が置いてあったので、私も子供のころから何度も手に取って読んでいました」

 

そう、熱すぎる“暮しの手帖愛”を語るのは、『テルマエ・ロマエ』を生み出した漫画家のヤマザキマリさん。

 

NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』がスタート。物語は昭和5年、10歳のヒロインの小橋常子(高畑充希)が、“とと(父親)”を亡くすところから始まる。常子は父に代わって母親と2人の妹を守る“とと姉ちゃん”となり、出版社を立ち上げ一世を風靡する生活総合月刊誌『あなたの暮し』を出版する−−。ヒロインのモチーフとなったのは、現在も刊行されている雑誌『暮しの手帖』を作った大橋鎭子さんの人生だ。

 

「『暮しの手帖』には、単なる“よい奥さんになりましょう”という内容ではなくて、時代の先を行く企画もたくさんありました。いまでもすごく覚えているのは、’70年代に、ニューヨークに住むゲイのカップルの暮しぶりを伝える記事。小学生だった私に、新しい価値観を与えてくれたインパクトのある記事でした」

 

“普通の雑誌”と比べると『暮しの手帖』はどの記事にも斬新さがあったのだ。

 

「レコード紹介ひとつとっても、やたらマニアックなクラシックの名盤を取り上げていたり(笑)。町で見かけたへんちくりんな看板を写真付きでとりあげるコーナーも、シニカルな視点で描かれていて毎号、楽しみでした。料理コーナーは“安い”“簡単”なのに、出てくるのはロイヤルホテル(現・リーガロイヤルホテル)や吉兆などの一流料理人だったりする。そういったこだわりに、雑誌のプライドを感じました」

 

16歳で日本の高校を中退し、イタリアの美術学校へ単身留学したとき、母から送られてきたのは『暮しの手帖』だった。

 

「お金は送ってくれずに、戦後間もないころのバックナンバー(笑)。まだ日本が貧しかったころの料理記事を参考にしなさいというアドバイスだったのかもしれません。本当に役に立って、ホットケーキとかオムライスとか、貧乏生活の空腹をしのぐことができました(笑)」

 

『とと姉ちゃん』では、同誌の誕生秘話も明かされることだろう。

 

「『暮しの手帖』は、いつも私のそばにあった“人生の家庭教師”です。ふだん、イタリアに住んでいるから朝ドラを見る機会は少ないですが、今回は見逃せません!」

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