「40代の恋は、子孫繁栄のためにオスとメスが求め合う“発情”時代のものとは違います。出産、子育てをして、なかには夫との別れを経験した人もいるでしょう。そんな人生の憂さや憂鬱を知る大人が恋をするのは、しんどいこと。でも素敵なことです」
こう語るのは、ドラマ『コントレール〜罪と恋〜』(NHK・金曜22時〜)の脚本を担当する大石静さん(64)。無差別殺人事件で夫を失った文(石田ゆり子)。事件から6年後、切り盛りするドライブイン『コントレール』で出会った暸司(井浦新)は、決して愛することを許されない、夫をあやめた男だった……という、大人の女のラブストーリーだ。
彼女は、これまでも『セカンドバージン』(’10年)、『ガラスの家』(’13年)といった、大人の女性をとりこにするラブストーリーを手掛けてきた。そんな大石さんに、“40代の恋”について語ってもらった。
「人生の折返し地点を過ぎてからの恋には、『生きているのはつらく悲しい』という前提があるはず。そういう中で、誰かを好きだとなれば、つらさや悲しみも乗り越えていこうと思えますよね。40代にとっての恋とは、苦しい人生をホッと照らす灯台の明かりのようなものじゃないかしら」
それを象徴するのが、『コントレール』の2話でヒロインの文が、恋する暸司の乗るトラックの明かりに向かい「光を求める虫のように、わたしはあの人に向かって走っている」と心の中でつぶやくシーンだ。
「恋はしたいと思ってするのではなく、思わず落ちるもの。『金曜日はうれしくて、朝から頭が変なの』(暸司と文が逢瀬を重ねるのは毎週金曜日)という文のセリフが、恋に落ちたかわいさが出ていて、私はいちばん好きです。自画自賛ですが(笑)」
とはいえ、「恋っていいね」というほど軽くはない。「元気にみんなで恋をしましょう」と言っているわけでもないと大石さん。
「『セカンドバージン』や『ガラスの家』を書いていても感じましたが、誰かを好きになる、恋愛をするということは、己を照らし出し、自分の曖昧さもあぶり出されること。素敵なことであると同時に、苦しく痛いことでもあると思います。40代になり、自分の人生のスタイルがある程度できあがっている中で、あえて『恋は求めない』という人もいますし、それを否定することもできません。ただ、いくつになっても“恋”は、ないよりはあったほうがいいじゃないかなと思うのです」