連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の第11週(6月13日〜18日)も、波乱の展開が待っていた。昭和15 年10月、戦争が長期化する中で、常子(高畑充希)が勤める食品会社は次第に閑散としていく。青柳商店も森田屋も例外ではなく、宗吉(ピエール瀧)は給金をしばらく待って欲しいと、君子(木村多江)たちに頭を下げる。仕入れがままならず、注文も売上も減少の一途だという。そんな折、常子は多田(我妻三輪子)に相談にのってほしいと言われ、ビアホールに行くのだが……。

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戦争の影響は日に日に濃くなり、庶民たちの生活に影を落としていく。日本から外国への輸出が禁止となり、常子の会社の経営も悪化。タイピストたちの仕事も減少していた。不景気は森田屋も例外ではなく、苦しい状況が続いていた。闇取引を行う者も後を絶たず、宗吉(ピエール瀧)は取引先を訪ね歩き、材料の調達に奔走するも、国の価格統制令を守る店に材料は回ってこない。注文も売上も減少の一途をたどっていくばかりだった。宗吉とまつ(秋野暢子)は、給金をしばらく待って欲しいと君子に頭を下げる。君子と常子はこれを快諾し、常子は、自分が稼ぐから問題ないと妹たちを安心させる。そんな折、常子は同僚の多田に誘われ、ビアホールに出かける。「反抗的な弟たちのことで相談にのってほしい。憂さ晴らしをかねて」という多田。ところが酔っ払った男性客に絡まれてしまう常子たち。美子(杉咲花)からもらったマフラーを踏みにじられ男性たちと対峙する常子だったが、偶然通りかかった少女・お竜(志田未来)に助けられる。警察が乱入し、事情を聞かれた常子は、勤め先をポロリと口にしてしまう。

 

翌朝出社すると、上司の山岸(田口浩正)に呼び出され、突然の解雇宣告を受ける。人員削減したい会社側の思惑と不祥事が重なってしまった。そして大家族を抱える多田は、保身のため常子にすべての責任を押し付けたのだ。「私がクビになったら、誰が家族を支えていけばいいんですか?」と常子は山岸に激しく抵抗するが、全く相手にされない。多田は自分か常子、どちらが辞めなきゃいけなかったと明かし、「あなたが私だったら同じことをしたはず」と開き直る。家庭の境遇が同じ多田を責めることもできず、泣き崩れる常子。会社を去る常子に早乙女(真野)は、「このご時世でまっすぐに生きていくと報われないことばかり。でも、負けないでください」と激励する。しかし落ち込む常子は「今の私は、その言葉は受け止めることはできない」と言い残し、タイピストの部屋を後にする。

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突然の解雇宣告を受けた常子は、力なく会社を後にする。事情を知った鞠子(相楽樹)と美子は学校を辞めて働くと言う。すぐに職を見つけると明るく振舞う常子。就職の相談にのってもらおうと祖母の滝子(大地真央)の元を訪れると、滝子は心労が祟って突然倒れてしまう。軍から物価統制価格の半額で木材を供出するよう強要され、青柳商店も経営難に陥っていた。病身を押して、寄り合いを開く滝子。時世に逆らえず多くの材木商が店を畳むと告げる中、照代(平岩紙)が森田屋も店を畳むと公言する。宗吉と照代はまつには内緒で、軍需景気で景気がいい高崎への移転を考えていたのだ。何も知らされていないまつは激怒し、頑として聞く耳を持たない。だが移転を決めたのは、ほかにも理由があるという。じつは、富江(川栄李奈)のお腹には長谷川(浜野謙太)の子が宿っていた。2人のことを初めて知り、激昂する宗吉。森田屋は大騒動になる。照代は、店の事情だけでなく、富江や生まれてくる子のことも考え、少しでも食料事情のいい実家に転居することが最善だとまつを説得する。何も言えない常子たちだった。

 

一夜明け、まつは家族のために深川を離れる決断をする。「背に腹は変えられない。何より身重の富江に腹いっぱい食わせて滋養をつけてやりたい。かわいいひ孫のために、(上州の)からっ風だって何だって耐え忍んでやるよ」と。宗吉も2人の結婚を認め、ささやかな祝言を催すことに。厳しい食糧事情の中、準備は進められる。小橋家の計らいで、美子があつらえた富江の着物も揃った。「森田屋最後の大仕事だよ!」とがぜん張り切るまつ。宗吉は「鯛の尾頭付きが手に入らなかったから」と、代わりに入手した魚の準備に取り掛かる。すると、長谷川が自分にやらせて欲しいと申し出るのだった。「大将が用意してくださったその魚、フッコは将来スズキになる出世魚で縁起がいい。あっしはいつまでも半人前のままじゃなく、必ず一人前になって家族を守ります。大将の気持ちをしかと受け止めました」と。包丁を置き「今まで教えたことができなければぶん殴るから」と宗吉。まつたちが見守る中、長谷川は魚をおろし始める。

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祝言の日、宴会の配膳に忙しく立ち回る常子たち。そこには、笑顔で杯を交わすまつと滝子の姿もあった。長年ライバル同士だった2人は、お互いに孫がいて、まつにひ孫ができる幸せを分かち合う。新郎の長谷川は、お礼の代わりだと言ってこう語り始めた。「人生は柳のようにあれ。長い人生の中、嵐が起こり、強い風が吹きすさぶ状況が来ても、柳のようにしなやかに耐えれば、やがて青く晴れわたる青空が戻ってくる」と。一方、富江は「誰よりも早く起きて文句も言わず家事も店のことも全部やる。そんな母・照代のように自分もなりたい」と常子たちに打ち明ける。その言葉に、常子は仕事を失った一抹の不安を忘れ、温かい気持ちになる。さらに富江は長谷川との馴れ初めを語る。きっかけは5年前、鞠子の制服がなくなった騒動に遡る。富江の制服姿を見た長谷川が「鞠子の制服姿よりも似合っている」と言い、その言葉が嬉しくて長谷川を意識するようになったという。初めて聞く話に、常子たちは仰天。家族のように過ごした森田屋の人々との最後の幸せなときを過ごす。

 

そして、雲ひとつない秋晴れの日、森田屋は引越しの日を迎える。家財道具が運び出され、がらんと静まった家の中にひとり佇むまつ。「毎日、ここで弁当作り続ける、当たり前の暮らしがしたかった」と涙を流す。ときどき店の様子を見に来て、まつたちが戻ってくるまで家の手入れをすると話す常子に、その必要はないと笑う。「今度、東京に帰ってくるとき、もっといいうちに暮らすから」と。そして、いよいよ別れのとき、滝子が現れた。見送りではなく、たまたま仕事で通りかかったと言う滝子は、まつといつものようにつば迫り合いを繰り広げる。笑い合う森田屋の人々と常子たち。湿っぽいのは嫌いだと明るく去る宗吉たちに励まされ、常子は再出発を図ろうと奮起する。

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滝子のところに再び身を寄せる常子たち。職を探してあちこち回るも、一向に見つかる気配がない。そんな常子のために鞠子は求人広告の内容を書き写したノートを、美子は新聞の求人広告の切り抜きを手渡す。2人の気持ちに応えようと、広告を出した会社の面接を片っ端から受ける常子。しかし賃金が広告に出ていた金額と違うなど、再就職先が決まらない。いよいよ手詰まりとなったとき、常子は給仕の坂田(斉藤暁)から貰ったキャラメルを包んでいた新聞紙から「事務員募集 男女問わず」の文字を見つける。男女分けずに募集していることに興味を持ち、その会社を訪ねる常子。そこへ五反田(及川光博)という編集部員が駆け込んでくる。五反田は常子が求人広告を見てきたことを知ると、すぐさま印刷所に連れていく。そこには数百冊の雑誌が置かれており、軍の検閲に引っかかったページを切り取らなければならないという。常子は五反田と共に作業を手伝い、なんとか締め切りまでに終わらせる。そこにやって来た編集長の谷(山口智充)に、常子は何でもやるから働かせてくれと頭を下げる。すると、即採用が決まる。こうして常子は甲東出版で働くことになり、出版の世界に足を踏み入れた。

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第12週(6月20日〜25日)のとと姉ちゃんは、タイピストの会社をクビになってしまった常子(高畑充希)を描く。給仕の坂田(斉藤暁)から貰ったキャラメルの包み紙にあった求人募集の広告を見つけ、突如「甲東出版」という小さな出版社に勤めることになった常子。真面目で堅物の編集長・谷(山口智充)や、女性好きでキザな記者・五反田(及川光博)に、一から雑誌作りを教わっていく。ある日、常子は五反田から内務省に勤める、ある男から挿絵をもらってきて欲しいと頼まれる。名前は花山伊佐次(唐沢寿明)。常子は、のちに人生最大のパートナーとなる人物との運命の出会いを果たす。

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