「ヒロインの松嶋(菜々子)さんが汗をかき、涙を流し、奮闘する姿にドキドキハラハラして見てほしい。このドラマは現代の等身大の40代“働く女”の苦悩と本音を描いています」
そう語るのは7月21日にスタートする『営業部長 吉良奈津子』(フジテレビ系・木曜22時、初回15分拡大)の脚本家・井上由美子さん。’14年には『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』で、主婦の本音をリアルに描き出し“昼顔現象”を巻き起こした彼女が今回手がけるテーマは、女性の「産後復帰」だ。
このヒロインを、’13年『救命病棟24時 第5シリーズ』以来3年ぶりの連続ドラマ主演の松嶋菜々子が演じ話題となっている。では、なぜ「産後復帰」なのだろうか。
「職場にいるときは、子どものことを考えてしまい、子どもの相手をしているときには仕事のことが頭をよぎる……。どちらにも100%集中できず、いつも身を引きちぎられるような感覚があるはず。そんな、いつの時代にもある、“働くお母さん”の悲しさや苦しさを、今回のドラマでもきちんと描き、見ている人と地続きの女性を主人公にしたかった。さらに今の日本で“働く女”を描くには、40代で子どもがいる女性、しかも大きな仕事を与えられた女性ではないか−−と思いました」
それを演じられる女優として、白羽の矢が立ったのが松嶋だ。彼女と井上さんの出会いは20年前、弁護士を目指すヒロインを松嶋が演じたNHKの朝ドラ『ひまわり』だった。
「松嶋さんは不思議な人。彼女が演じる喜怒哀楽に、見る側がすぅ〜っと吸い寄せられる何かがある。『ひまわり』」のころはお互いにまだ新人でしたが、彼女を通して、お芝居を描くとはどういうことかに気づかされました。それからは『ここぞという、本当にご一緒したいときに再会したい』と思っていたんです」
そして20年ぶりのタッグが実現した。
「これまで、いろいろな作家さんとお仕事されてきた松嶋さんを、今回のドラマでは、“誰よりもいじめたい”という気持ちがあります(笑)」
それは新人時代に出会った“同志”松嶋へのラブレターだという井上さん。
「松嶋さんにはコメディセンスもあるので、憎たらしいことを言っても、ちょっとほほ笑ましい。そうした魅力を生かして、嫌な本音もかわいく出せるといいなと思います」
ドラマのナレーションには《負けず嫌いの女王様 チヤホヤしてくれる者はどこにもいません。汗にまみれて闘うしかないのです》とある。
「女がちやほやされたのはバブルの昔、もはやそんなものは存在しません。私たち女性は汗をかいて働くしかないのです。これからの時代、女性も60歳、70歳までと長い期間働くようになっていくと思います。だから20年後、60代になった松嶋さんと再び“働く女”のドラマを−−それもカッコいいですね(笑)」