「最初に記事を見たときは、怒るも何も呆れました。まさしく“フェイク・ニュース”ですからね。トランプさんのお気持ちが、よ〜くわかりました(笑)」
こう笑いながら本誌の直撃取材に答えてくれたのは、麗人・美輪明宏さん(81)。2月20日付の『サンケイスポーツ(以下、サンスポ)』の、《美輪明宏、舞台引退を示唆〜》の記事を読んで、多くの人は驚いたはず。
美輪さんが、「肉体的にも節という節が曲がってきて、キーが下がって音域も変わりましてダミ声になって、肺活量も少なくなって。それでものを言いますから時々震えがきます」と苦労を吐露。「今度のお芝居でひょっとすると、おしまいになるかもしれません」と、覚悟を語ったという内容であった。この記事はネット上でも大きく取り上げられ、たちまち“美輪さん引退か!?”と、大騒ぎとなる事態に−−。
ことの発端は前日の19日、美輪さん自身が演出・主演する舞台『葵上・卒塔婆小町』大阪公演の記者会見でのこと。美輪さんが語る。
「大阪のホテルで、20人ぐらいのジャーナリストに集まっていただき、舞台内容、演出などについてお話をしました。『卒塔婆小町』は100歳の老婆と20代の美女・小野小町を早変わりで演じます。肉体的にも大変で、その演技の難しさについて、ご説明したのです。老婆の役では関節の節々を曲げて演じます」
美輪さんは取材陣の前でその姿を演じてみせたという。
「背中を曲げて、手足を震わせながら演じる。それをみなさんの前でもお見せしました。背中を曲げると横隔膜が動きづらくなるので、呼吸が苦しくなり、しわがれ声になるんですよ、と。そして20代の小町の役では、背筋を伸ばし、声の質もハイトーンに変わる。私は10代のころから(出せる)音域が変わっていない、というお話もしました。ところが、翌日のサンスポさんの記事では、そういう舞台演出上の話がすべてカットされ、あたかも今の私が老いぼれて舞台を引退するような話にすり替わっていた。だから、ビックリしたのです」
ビックリしたのは、ご本人だけではない。ファンをはじめ、仕事関係者らにとっても寝耳に水のニュースだったことから、事務所への問い合わせが相次いだ。だが数時間後、話は急展開する。20日の午後、サンスポはネット配信で《美輪明宏さん、舞台引退を示唆は誤りでした》と以下の訂正記事を掲載したのである。
《美輪さんの発言はあくまで今回の演目に関してのもので、舞台からの引退ではありません。また美輪さんの歌唱のキーが下がっているというわけでもございません》−−。
サンスポに訂正記事掲載に至った経緯を聞いたところ、「記事に書いてあるとおりです」(広報室)。これで美輪さんが舞台引退を示唆したという記事は完全に撤回されたわけだが、今回ばかりは、さすがにオカンムリになられたのでは……?
「私が“怒っている!”という記事を書きたいんでしょ?そうはいきませんよ(笑)。最初から呆れて笑っちゃったぐらいです。それよりも今は音楽会や舞台の稽古で大忙しなので、終わったことを気にしている暇なんてありません」
美輪さんが現在稽古中だと語る舞台『葵上・卒塔婆小町』は、今回で5回目の公演となる人気のお芝居。
「台本を3〜4回読み直したら、完全にセリフが頭の中に入っていました。稽古も順調です。みなさん、ぜひご覧になってください。見ないと一生の損ですから(笑)」
美輪さんの辞書に“引退”の2文字はなさそうだ。