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10月1日放送の「キングオブコント2017」で、お笑い界に衝撃が走りました。優勝したのは、結成14年目のコンビ「かまいたち」でしたが、準優勝した異色の男女コンビ「にゃんこスター」が、話題を総ざらいしたのです。

 

コントバトルにおいて優勝を逃したコンビがブレークするというのはよくある話ですが、にゃんこスターはその芸風が異色すぎて賛否が分かれています。

 

採点をした審査員たちからは全員高評価だったのに対し、一般的人視聴者からは「笑えない」「面白さが理解できない」といった批判的な意見も多く集まっています。ちなみにお笑いにはそこまで精通しているわけではない筆者ですが、やっぱり彼らの面白さは皆目わかりません。むしろアンゴラ村長からほんのり漂う“ぶりっこ臭”に、苛立ちを覚えるほどでした。

 

そんな個人的な感情は置いておいてもう少し冷静に彼らのブレークの兆しを紐解いていくと、お笑い以外でも今求められる「時代のニーズ」が見えてきます。

 

■ネタが時代にマッチしすぎている

 

にゃんこスターのコントを見ていない人のために展開を紹介すると、今回番組で披露されたコントは、ツッコミ役のスーパー3助(34)が「なわとび大好き少年」に扮して登場し、たまたま開催される「リズムなわとび発表会」を観覧。するとアンゴラ村長(23)が現れ、リズムなわとびを披露します。

 

しかしサビになると、アンゴラ村長はなわとびを放り投げ、気持ち悪いけれどクセになる動きのダンスを披露。スーパー3助がひたすらツッコミを絶叫するという流れです。

 

最後には「私たちのコンビ名は『にゃんこスター』でした!」と自己紹介で締めくくるのですが、コントにはいわゆる「巧みなツッコミ」や「笑いの精神」は存在せず、ただただ明るくてスピーディでわかりやすい展開が続きます。

 

これがお笑い界の各方面から絶賛を集めたわけですが、このコントを見たときふと思ったのです。時代のニーズにハマりすぎていると。時代のニーズを説明するにあたり、キーワードは2つ。「短時間理解」と「真似しがい」です。

 

今の時代はなんでも短い時間で簡単に理解し、面白いと感じられるコンテンツが多くを占めています。ゲームはプレイに時間のかかる超大作RPGより細切れ時間に楽しめるスマホゲームが主流ですし、ドラマ制作も1話進むごとに謎が深まるモノより1話完結のライトで展開の早いドラマが好まれつつあります。

 

これをお笑いに当てはめるとやはり巧みなコントも良いものの、数秒みれば面白さが理解できる彼らのコントは時代に歓迎される形態なのがわかります。

 

また「真似しがい」でいえば、現在話題の芸人やドラマの多くはビジュアルやダンスなど“ウリが真似しやすいものが多い”のが特徴です。

 

なわとびやフラフープ、そして直球な連続ツッコミはブルゾンちえみさんや平野ノラさんなどの流れを汲んでいるように思います。また彼らのリズム芸は「やってみた」系動画としての需要も満たすことでしょう。

 

とはいえリズムやインパクト勝負のネタは、どうしても消費スピードが早いもの。彼らのネタが“大真面目に意外すぎるバカをやる”という展開だからウケるもの。「にゃんこスター=インパクトが凄い」という前情報が知れ渡ってしまった今、どこまで伸びるのかは注目です。

 

■「新しい」ということに高い評価がされる時代

 

そもそもお笑界に限らず、今は多くの分野で「突き抜けた存在」を救世主として求めがちです。

 

政治の世界では小池百合子東京都知事がジャンヌダルクのようにもてはやされ、相撲界では稀勢の里が18年ぶりの日本人横綱としてフィーバー。他にもプロ棋界では、史上最年少プロ棋士の藤井聡太四段が大ブームとなっています。

 

もちろん彼らの成し遂げたことは凄いのですが、フィーバーまで巻き起すとなると、時代がそもそも“突き抜けた新しさ”を求めていることに他なりません。その点においてにゃんこスターはコントの斬新さだけでなく、史上初女性ファイナリスト、史上最年少出場(23歳4カ月)、コンビ結成最速(5カ月)、兼業芸人(アンゴラ村長はベンチャー企業の会社員)と話題性にも富んでいます。

 

もともとアンゴラ村長の無名時代を知るタレントの伊集院光さんは「長くお笑いブームは続いてきたが、彼らがキングになったら次の局面に入る気がする」と語っています。次の局面が何なのかはわかりませんが、確かに今までのお笑い芸人は「貧乏な下積み時代を経験し、コツコツ芸を磨いて売れる」というような、苦労さが常識としてありました。

 

にゃんこスターのブレークは、ある種の閉塞感を打破する存在を実はみんなが求めていたという証拠なのかもしれません。

 

ただしお笑いを頻繁に見る“目が肥えた人”からすると、彼らの存在は受け入れにくいようです。「彼らのコントは『エンタの神様』的で、小学生にウケそうって以外は何も感じない」「リズムネタだけどストーリーがないから、縄跳びを別のモノに変えるか、焦らして跳ばない展開を変える以外、応用が利かないのでは」などなど、筋のとおった辛辣な感想に思わず納得してしまいました。

 

彼らの実力は半年もすれば結果として出てくるのでしょう。なにはともあれ、優勝した『かまいたち』が不憫でなりません。いっそかまいたちが悔しさあまって「なわとびコント」を発表すれば、あえての便乗商法で盛り上がるかも。相乗効果が生まれれば、たしかに「お笑い界が変わる」と言えそうです。

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