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連続テレビ小説『べっぴんさん』の第9週は、終戦から3年。すみれ(芳根京子)たちの暮らしも少しずつ上向き始めていた。ある日、「キアリス」に孫へのプレゼントを買い求めるため、ひとりの女性(前田美波里)が来店する。

 

すみれたちの商品の品質に感心するその婦人は、2年前のファッションショーで配布したショッップカードを差し出す。「神戸に来たときには、ぜひにと思うて」。ずっとカードを大切にしてくれていた婦人の言葉に喜ぶすみれたち。

 

その一件をヒントに包装紙にキアリスのリスのマークを入れることを思いついたすみれは、さらに商品にもキアリスの名前を入れることを提案する。「なんや、ちゃんとお店になってきたわ」と明美(谷村美月)。ベビーブームの影響もあり順調に客足を伸ばすキアリスに、新聞の取材の申し込みが舞い込む。

 

一方、紀夫(永山絢斗)は坂東営業部の経理として堅実に仕事を進めており、潔(高良健吾)も近々会社を継いでもらおうと得意先との顔つなぎを始める。ある日、大急百貨店の社長・大島(伊武雅刀)を接待していると、彼が意外な店に興味をもっていることを知る。大島の手にしたショップカードの「キアリス」の文字を見て驚く潔たち。「女房が言うんだよ、間違いなくいい店だって」と話す大島に、潔と紀夫は自分たちが間を繋ぐと申し出るのだった。

 

紀夫から、大急百貨店がキアリスの商品に興味を持っていることがすみれたちに知らされる。勝二(田中要次)ら夫たちは舞いあがり、店に集って経営のあれこれに口を出す。仕入れ値や商品の在庫数などの記載もない帳簿を見て、「本気で商売をやってるか!」と紀夫。すると、マイペースなすみれたちは「それやったら、そこまでしなくても」と百貨店への出店を断ると言い出すのだった。執着心のないすみれたちの態度にあきれる夫たち。

 

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ところが翌日、キアリスを取材した新聞が出る。「お母さんがお母さんのために」と書かれた記事には独身の明美の名前だけが載っていなかった。明美のことがないがしろにされ、すみれたちは胸を痛める。

 

すみれを説得できなかったことで、紀夫は坂東営業部の同僚に責められる。百貨店に恩を売ることが、会社の利益につながるからだ。その晩、すみれは紀夫の素直な思いを聞く。もっとたくさんの人に使ってもらって、知ってもらうことで「そこからいろんな可能性が広がるんやないかなあ」と紀夫。

 

翌日、すみれは、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)、明美に、「新聞記事に4人の店だということが書かれていなくて悔しかった」と打ち明ける。きちんと4人の店ということを知ってほしい、だから百貨店に出品をしたいと主張するすみれに同意する3人。

 

しかし、大量の商品をどうするのか、製作場所はどうするのか、問題は山積みだった。再び紀夫ら店に集結し、下請けに縫製を発注するべきだと主張するが、すみれら妻たちは、気心の知れた、時子ら商店街の女性たちに頼もうと言う。いっぽう夫たちは「危ない妻たちに代わり、自分たちが手綱を引かなければ」と意気投合して「男会」を結成する。

 

商店街の友人たちを巻き込み、百貨店への出品にむけた商品作りを始めるすみれたち。戦争で夫を亡くした時子は、誘ってくれて嬉しかったと言う。「手に職をつけて、女一人でもちゃんと生きていけるように頑張りたい」と。気勢が上がる女性たちだったが、その一方で、今後忙しくなるとしたら子どもたちをどうしたらいいか悩む。知り合いのつてで保育所に預けることを決意するすみれたち。だが、それぞれの家庭で事情があり一筋縄にいかない。

 

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そんな中、百貨店の担当者と打ち合わせの日を迎える。担当の小山(夙川アトム)は子ども服につけたキアリスのタグをすべて取り外し、代わりに百貨店の特選マークを付けると言う。紀夫は名誉なことだと喜ぶが、困惑するすみれ。店に戻り、自分たちの商品から店の名前を外さなければならないと告げると、「なんで?」と良子と君枝もすみれと同じ違和感を覚えるのだった。

 

すみれは偵察のために百貨店へと足を運ぶ。夏のセールが開催され、賑わう店内。すみれは、売れ残り商品が大量に処分される場を目の当たりにする。そんな折、良子の息子の龍一が保育所で怪我を負った上に、保母から今後は預かれないと言われてしまう。落ち込む良子は勝二に不平を漏らすが、逆に子供を甘やかしすぎだと咎められる。

 

不安と不信感を抱えたまま、夫たちを交えた百貨店との2回目の打ち合わせが行われる。“大急特選”のマークが付くと聞かされた上に、商品は買取で、商品の入れ替えや季節ごとの販売戦略などもすべて百貨店が責任を負い、販売スタッフも用意するという万全の体制に「さすが大急や!」と感嘆の声をあげる勝二と昭一。さらに小山から量産のためにいくつか工程を省略してほしいと提言する。

 

すると前回の打合せ以来、不満を募らせるすみれはついに我慢ができなくなり、「そんなことをしたら、私たちの作るキアリスのものではなくなります」と反論。大急百貨店への出店の話はなかったことにして欲しいと言い出す。

 

「少し考えてからでもよかったのではないか」。怒りを隠せない紀夫に、すみれは「考えても、変わらないと思った」と主張する。やけになり酔っぱらった紀夫を連れて帰った潔とゆり(蓮佛美沙子)にも「自分の気持ちを変えることはできない」と頭を下げるすみれ。

 

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一方、明美のもとには妖しい男が一緒に商売をしないかと迫る。その男は、かつて梅田の闇市で場銭を荒稼ぎしていた玉井(土平ドンペイ)。キアリスの類似品を安く売って儲けようと明美を誘う。すみれたちと違い、夫も子供もいない、家もない、そんな明美に必要なのは「金だ」と主張する玉井。

 

ぼんやり考え込む明美のために、住み込み従業員・武(中島広稀)が茶を運んでくる。「あんたも苦労してきたんやろ。よう気がつくもんな。人のことよう見とう」と褒める明美に、武は、父の死後、実家の工場を継いだ義兄から家を出るように命じられたと説明する。しかし「寂しくねえです!」と武。明美に微笑みかけると、こう語るのだった。「わしには、明美さんや、すみれさんや、良子さんや、君枝さんがおりますけん!」

 

翌日、坂東営業部に小山がやってきて、大急百貨店の大島社長が「直接すみれに会いたい」と言っていると告げる。気が進まないすみれだったが、「ええ条件もぎょうさん出してくださったんやぞ。きちんと顔を付け合わせて話をすることは礼儀やろ」とめずらしく語気を荒くする紀夫に仕方なく従う。百貨店の応接室に出向いたすみれは……。

 

第10週の『べっぴんさん』は、大急百貨店へのキアリスの出店を断ったすみれは、社長の大島に理由を求められる。製品作りの工程を減らすよう求められたことや、売れ残り品が処分されることは受け入れられないと説明したすみれに、大島は試しに10日間だけ大急百貨店で委託販売をすることを提案。夫の紀夫は心配するものの、キアリスを広めるチャンスだと引き受けたすみれは、仲間の明美・良子・君枝と一緒に、百貨店への出店準備を始める。

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