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連続テレビ小説『べっぴんさん』第10週、「商いの聖地へ」。大急百貨店へのキアリスの出店を断ったすみれ(芳根京子)は社長の大島(伊武雅刀)に理由を求められる。製品作りの工程を減らすよう求められたことや、売り残り品が処分されることは受け入れられないと説明したすみれに大島は「無駄なく、合理的に、と仕事をしているうちに、あなたの感じた一番大事なことを忘れてしまっていた」と詫びる。そして、試しに10日間だけ大急百貨店で委託販売をすることを提案する。

 

紀夫(永山絢斗)ら夫たちは場所代や人件費を払わなければならない上に、売れ残りの損害などがすべてキアリスの負担になると引き止める。しかしキアリスを広めるチャンスだと引き受けたすみれたちは、百貨店への出店準備を始める。

 

期間限定で百貨店へのキアリス出店を決めたすみれたちは友人や知り合いに縫製や接客の手伝いを頼みつつ、百貨店でしか買えない目玉商品を考えていた。「大急の10日間が終わったら、どんなふうになってるんだろう」と期待を膨らませる良子(百田夏菜子)たち。ところが、良子の息子・龍一がお店の情報を手書きしたカードをめちゃくちゃにしてしまう。息子をしっかり叱らない良子を注意する明美(谷村美月)だったが、動揺する良子はその言葉に反発。「明美さんは、子供がおらんからわからんのや」とつい心ない言葉を口走ってしまい、店内に気まずい空気が流れる。

 

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すみれたちは、百貨店での目玉商品として、かわいいリスの絵を描いたお弁当箱を作ると決める。百貨店担当者も賛成し、お弁当箱のことを広告に載せるが、そこには予想をはるかに超える数量が記載されていた。素材となるアルマイト製のお弁当箱を必死に買い集めるすみれたちだったが、そんな中、良子が息子の子育てに悩み店に来なくなってしまう。

 

ある夜、勝二がすみれたちの家にやって来て、良子が子育てに悩み精神的に追い詰められていることを打ち明ける。やんちゃな男の子というのは聞き分けがないと肩を落とす勝二に「手のかかる子は、ええ、悪いやなくて、何倍も手をかけてあげたらええんです。周りに何人も大人がおるでしょ、誰が親ややなくて、みんなで育てるんです」と助言する喜代(宮田圭子)。翌日、良子と龍一とともに出勤したすみれは、店のメンバーに、みんなで龍一の面倒をみていこうと提案する。「責めるようなこと言うて、堪忍な」と謝る明美に「私こそ、ひどいことを言うてしまってごめんなさい」と良子。キアリスのメンバーに笑顔が戻る。

 

いっぽうの君枝(土村芳)は、常日ごろ、息子の健太郎に手をかけすぎる義母・琴子(いしのようこ)の子育て方法に不満を感じていたが、良子の一件で改めて気づくのだった。働いている自分は十分に息子の相手ができないものの、いい子に育っているのは琴子のおかげだ、と。「健太郎をあんなに優しい子にしてくださって、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と礼を言う君枝。すると、琴子から思いがけない申し出が。君枝と昭一の会話から、お弁当箱が調達できずに困っていると知った君枝は、昔の知人を通じて大量のお弁当箱を集めてくれていたのだ。「301個目に健ちゃんの作ってあげて」と微笑む琴子。

 

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すみれたちは、ついに期間限定の百貨店での出店初日を迎える。キアリスに期待する大急はショーケースを2個用意し、周囲の売り場担当者から「鳴り物入りとはこのことやな」と嫉妬されるほど。商品の陳列を終え、いよいよ開店のチャイムが鳴ると、販売担当の悦子(滝裕可里)たちが颯爽と現れる。「こんなふうにお店に立つなんて、人生ってわからんもんやわ。昔、お母様が言ってたわ。どんな生き方をしてても、幼いころに叩き込まれたことは役に立つはず」と悦子。

 

しかし予想に反して、閑古鳥が泣いている売り場。心配して様子を見にきた紀夫に売れ行きを聞かれ、すみれは何も答えられない。その晩の夫たちの男会では、初日に客が一人も来なかったと聞き、「そんなことってあるんか? 天下の大急やぞ」と肩を落とす昭一。「(大急の)特選マークやったらな」と勝二がぼやくと、「そやから言うたのに……」と紀夫は頭を抱えるのだった。

 

2日たってもお客さんが一人も来ない結果に終わり、原因を考えるすみれたち。いつも百貨店に来るお客さんは子育ての終わった年配の方が多く、子供服に興味がないということに気づき、キアリスを知ってもらおうとある対策を打つのだった。

 

すみれたちは、キアリスを広告するためのポスターを作ることを思いつく。心配して店にやってきた夫たちに目もくれず、遅くなるから先に帰ってくれと言い、作業に没頭する。「こないな時間まで女が働くやなんて」とぼやく紀夫に「今はそんなこと言わないで」とすみれ。妻たちを置いて店に出た昭一らは、「なんで、『頑張れ』って言われへんのやろ」とため息をつく。「なんででしょうね、思ってるんですけどね」と紀夫。

 

いっぽうの妻たちは、「なんで、『頑張れ』って言えないんやろうね」と夫の態度に不満を漏らす。「顔に書いてあったじゃないですか、『頑張れ』っち」と武がかばうが、「思っとっても、顔に書いてあっても、言わなわからんって」と良子が愚痴を言えば、君枝も同意する。「それやのに、『あのとき思ってた』とか、後になって言うのよね」と。翌朝、すみれたちは、保育所や街の掲示板にポスターを貼って回るのだった。

 

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店3日目を迎えたキアリスは、目玉商品のアルマイト製の弁当箱の効果もあり、たくさんのお客さんでにぎわっていた。店に戻ったすみれは、「お客さん、たっくさん、いたよ!」と君枝たちに報告する。ようやく心から笑顔になれたすみれ。

 

「すごいなあ、すみれは……」。出店して6日目のキアリスは、客足がますます伸びていた。様子を見にやってきた紀夫は、店の賑わいを見て喜ぶものの、表情が曇る。

 

そのころの紀夫は、すみれの姉・ゆり(蓮佛美沙子)が企画した洋裁教室の説明会を担当することになり、人前に出るのが苦手な性格もあって慣れない仕事に苦しんでいた。あるとき「僕は経理が向いています」と潔(高良健吾)に担当替えを申し出るが、「紀夫くん自身の可能性を広げてもらいたいんや」と背中を押す潔。

 

ある日、いつもの屋台で昭一と勝二が妻たちの店が繁盛し、上機嫌で酒を飲んでいると、すでに酔っ払った紀夫がやってくる。その様子から、悩みごとがあるなら話してくれと言う昭一たちに「人付き合いが苦手で」と明かす紀夫。勝二から違う生き方を見つける方法もあると聞き、表情が明るくなる。そして泥酔状態で帰宅すると、すみれに「僕は職を替える。すみれは僕についてくればええんや〜」と告げる。しかし翌朝、「知らなかった。紀夫さんがそんなに悩んでいるなんて」と心配するすみれをよそに「なんや、それ?」とまったく記憶のない様子の紀夫。

 

好調な売れ行きのキアリスはショーケースに商品がほとんどない状態が続く。すみれは神戸の店の商品を持って補充するが、担当の小山(夙川アトム)から品切ればかりだと客から苦情が入っていると責められる。「せっかくのショーケースをすっからかんにしておくなんて、みっともないことは避けてください!」と小山。困ったすみれたちはショーケースを一つ返すことにするが、ほかの店の販売員たちは呆れた様子でそれを見守る。「聞いた!?  みんなショーケースが欲しくてたまらんのに」と。するとちょうどそこにやってきた社長の大島がショーケースを片付けるすみれたちを厳しい表情で見つめるのだった。

 

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大島はすみれたちを呼び出すと、ショーケースを減らすのではなく商品を増やして見てはどうかと提案する。「あと3日でも、わざわざここに出店しなければ出会うハウのないお客様と商品の出会いがある。これは素敵なことじゃないか。黙って過ぎても3日。懸命に過ぎても同じ3日や」と大島。

 

店に帰って、大島の言葉を君枝たちに伝えるすみれ。縫製を手伝ってくれている主婦たちに徹夜で商品を作ることをお願いすると、「楽しそうやない」「誰かのために何かを作るって楽しいよね」と皆、快諾してくれた。その日から必死で商品を作り、売り場に届けるすみれ。

 

「全部売れた……」。期間限定の百貨店への出店最終日を迎えたすみれたちは、目標額をはるかに越える売り上げをあげたことを知る。「はよ、主人に言いたいわ」と良子。いつも辛口ばかり言っていた夫たちも、妻たちの頑張りを認めるのだった。「ご苦労やったな。心配したり、反対したりしたけど、君らは君らの力で頑張ったんやな」と労う紀夫に、「ありがとう」と微笑むすみれ。「みんなで乾杯やな!」の昭一の音頭で、男会の飲み会に妻たちも参加することに。しかし明美は誰にも何も告げずにその場を立ち去る。

 

明美を追った武は「わし、じき一人前になっち、明美さんを幸せにしたいです!」と突然告白する。年齢差など関係なく明美を好きで「一緒にあったけえ家庭をつくりたいんじゃ!」と思いをぶつける武に「武ちゃん、ありがとう。ああ、嬉しい」と言いつつも「おやすみ、また明日な」と平静を装う明美。あさや靴店に入ると、何やら思案顔に……。

 

それから数日後、以前、すみれたちのショップカードを持って来た婦人が再び来店する。「今日は主人も連れてきたのよ」という言葉を聞き店の入り口を見やると、そこに現れたのは大島社長。驚くすみれたちに、大島は大急百貨店に正式に出店してみないかと提案する。「ずーっとだ、何年も何十年も。大急百貨店にキアリスの支店を出さないか?」と語る大島に、驚きで何も言葉が出てこないすみれたち。

 

そのころ会社の新しい企画である洋裁教室の説明会で司会を任された紀夫は、緊張のあまり客を前に突如倒れてしまう。

 

第11週の『べっぴんさん』、すみれたちはキアリスの支店を正式に大急百貨店へ出店することを決める。いっぽうすみれの夫・紀夫は会社の説明会で司会を任されたが、極度の緊張のため仕事中に倒れてしまい、ショックのあまり家で寝込むように。すみれの姉・ゆりと義兄の潔は紀夫を心配するが、同僚の間での信用は地に落ちてしまう。さらに、家事や育児を手伝っていた喜代が腰痛を悪化させ、入院することに。すみれは仕事に加え、家事や育児も全て自分がこなしていくことを決意する。

 

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