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連続テレビ小説『べっぴんさん』の第12週は、キアリスを辞めると決めたすみれ(芳根京子)と、娘のさくらと3人の家族の穏やかな暮らしに満足しつつも、すみれがこのまま店を辞めてしまっていいのかと戸惑う夫の紀夫(永山絢斗)の姿が描かれる。

 

「お仕事辞めるの? やったぁ」。娘のさくらが喜ぶ顔を見て、改めて店を辞める決心がついたすみれは、着々と仕事の引き継ぎを進めていく。引き止めたい気持ちはあるものの、明るく送り出そうと決める明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)ら仲間たち。すみれは、キアリスでの最後の仕事として、ベビー相談室で書き留めてきたお母さんたちの悩みやその解決法を手帳にまとめたいと提案する。

 

しかし夫たちは、貴重な知識をむやみに広げない方がよいと言って反対する。「そないなことしたら、誰かにマネされるんちゃうんか?」と昭一(平岡祐太)。明美は、そんな男たちを心が狭いと一刀両断し、「なんでもかんでも商売につなげなくてええんやないですか。もっと大きく考えや」と主張する。すみれは、西洋の育児法が広がれば、事故がなくなり、助かる命があるかもしれない。「だから、マネしてもらっていいんです

と微笑む。

 

すみれがキアリスを辞める日。すみれは、ベビー相談室の知識をまとめた本の名前を、英語で「道しるべ」を意味する「ガイド」を使って、「キアリスガイド」にしようと提案する。「お母ちゃんが見たら喜ぶやろうなあ」と感激する明美。良子、君枝も目を潤ませる。そして、武(中島広稀)から可愛いらしい花束を贈られ、ポロポロと涙を流すすみれ。晴れやかな表情でキアリスを旅立つのだった。

 

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キアリスを辞めて家事や子育てに専念していたすみれ。出勤する紀夫から「まだ言うてなかったな、ありがとう」と言われ、嬉しそうに微笑む。いっぽうキアリスでは君枝が百貨店での打ち合わせに出るようになっていたが、クリスマス商戦に向けて目玉商品を用意するように言われ頭を抱えるのだった。明美もベビー相談室の内容を文章にまとめる作業を任されていたが、文章の表現が固すぎると指摘されて悩み、すみれのもとへ相談にいく。書き方を教えて欲しいと頼む明美に、「家でもできることやし」と原稿の執筆を引き受けるすみれ。

 

そのころ、すみれの姉のゆり(蓮佛美沙子)は、腰痛で入院中の喜代(宮田圭子)の見舞いに病院を訪れる。ゆりの異変を感じた喜代が「おなかのお子さんも、お仕事も順調やのに、お顔がすぐれませんね」と声をかけると、泣き始めるゆり。子供ができたとわかってからというもの、ゆりに仕事を続けてほしいと考える夫の潔(高良健吾)に不満を募らせていたのだ。

 

「ゆりはいてるか!?」。ある朝、息を切らした潔がすみれの家に飛び込んでくる。ゆりが、家出をしてしまったとのこと。すぐに近江の実家にいるとわかってほっとする潔だったが、義父の五十八(生瀬勝久)から「ゆりから、『迎えに来ても絶対帰らん』と伝えてくれと言われとんのや……」と告げられ、驚く。途方にくれた潔は麻田(市村正親)のもとを訪ねる。

 

麻田から、「何のために頑張ってるのか?」と訊ねられ、胸の内を明かす潔。「五十八さんと親父の思いを、誰よりもわしらが……。そやからこそ、会社のために頑張ってる。紀夫くんがちゃんと次の後継者としてやっていけるように、全力で頑張ってる。ゆりかて、昔から女だてらに社会で活躍したい言うてたから、そのためにもわしはやってる」。

 

すると、麻田は「お前は、見誤ってる」と潔を一喝。「人は、自分の幸せのために生きるんや」と諭すのだった。

 

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ある日、さくらのカーディガンを直しながら、子どもたちのための刺しゅうのサービスのアイデアが浮かんだすみれ。キアリスを訪れ、お客様の要望を聞いて、好きな模様を商品に刺繍するのはどうかと提案する。「ええね、編み物のサービス」と感心する明美。「すみれちゃんがいてくれたらなあ」。キアリスのメンバーたちは、すみれの存在の大きさを改めて痛感するのだった。

 

すみれは、紀夫と共にさくらの友達のためのクリスマスプレゼント作りに取り組む。ピンクや白の塗料で塗った缶に、庭に生っていた木の実や鈴で飾ることを思いつくすみれ。「おお! ええなあ」と感嘆の声を上げる紀夫は、誰かのために“べっぴん”を作っているときのすみれの輝きを改めて感じる。

 

そのころ、ゆりを迎えに近江の坂東本家を訪ねる潔。ゆりは、トク子(中村玉緒)らとお伊勢参りに出かけて不在だった。ゆりの家出を詫びる潔に、「謝らなあかんのは、わしのほうや」と五十八。戦争で何もかも失ってしまった自分は、取り戻す気力がなく、潔を坂東営業部に縛り付けてしまったと詫びる。「もうええのや、潔くん。これからは自分のために生きても」と五十八。

 

久しぶりに家族とゆったりとした時間を過ごすすみれ。保育所のさくらの友達に配るプレゼントを作るため、紀夫と共に材料の買い出しに。「こうして一緒に2人で買い物するなんて、初めてのことね」。焼き芋を買い、2人で分け合って食べるすみれは、紀夫の横顔を見つめながら幸せを感じていた。

 

帰宅後、プレゼント作りに精を出す2人。棚の上に飾られたさくらの赤ん坊のときの写真を見ながら、紀夫はつぶやく。「僕は戦地におったから、帰ってきた時は、さくらはもう2つやった。赤ちゃんのときを見られなかった。それだけは、残念やったなあと思う

。すみれは、戦時中の子育てはいろいろ苦労があったが、「3人で暮らすという夢が叶った

と嬉しそうに微笑む。「楽しいわ!さくらのお友達へのクリスマスプレゼントが作れるなんて」。

 

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キアリスではクリスマス商戦用の目玉商品作りに追われていた。紀夫と勝二(田中要次)、昭一ら夫たちは、キアリスの経理処理を手伝っていたが、仕事の片手間では手に負えないほどの量に音を上げ、専従の経理担当者が必要だと訴える。

 

そのころ近江では、お伊勢さんから戻ったゆりと潔が2人きりで話すことになった。ゆりの体を気遣いつつも、「わしの何があかんのや?」と訊ねる潔は、社会で活躍したいというゆりの志も坂東営業部も精いっぱい守ってきたと言い、「これから生まれてくる子のことも守っていく」と訴える。いっぽうのゆりは、「潔さんは何も間違ってない。でも、私、気付いたの。ごめんなさい。きっと変わったんです。私にとって大事なものが……」と言って涙を流した。

 

夜になり、潔がふと目を覚まして縁側に出ると、そこにいたのは亡くなった父・正蔵(名倉潤)だった。久しぶりに親子水入らずで会話をする2人。正蔵は、空襲で命を落としたことは無念だったが、命というものは、継がれていくし、自分には潔がいると言い「潔、わしに孫ができるらしいやないか」と嬉しそうに笑うのだった。

 

夢から覚めた潔は、ゆりと再び向き合う。夢で再会した正蔵に、坂東営業部を頼むと言われると思っていたが、正蔵は会社の話は一切せず、ただ孫ができたことを喜んでいたと話す潔。「みんな、生きていれば変わる。変わることが生きるということなんやて、親父の喜ぶ顔見て、そう思ったわ」と目を輝かせる。

 

そして、「わしは、ゆりとちゃんと家族になりたい!」と力強く言うと、仕事よりも、これからは子供をしっかり育てたいと打ち明けるゆりに、「家を建てよう、わしらの家や!」と宣言するのだった。

 

いっぽう、すみれとの将来を考えていた紀夫は、ある重大な決意を伝えるため、五十八を訪ねる。緊張した面持ちの紀夫は、五十八を前に突然土下座をすると、「坂東営業部を辞めさせてください」と頭を深く下げるのだった。

 

クリスマスイヴの日、すみれは紀夫と共にさくらが通う保育所を訪れ、クリスマスプレゼントを子供たちに配る。喧嘩をしていた親友のひろ子とさくらが仲直りできたことを知って安堵する2人。その晩、すみれはさくらと共にキアリスのクリスマスパーティーに参加する。

 

退院した喜代も、昭一たちも駆けつけ賑わう店内だったが、店の外には深刻な表情で話をする紀夫と潔の姿があった。「ここからは、別の道や」。互いに肩に手をやり、別れを告げる2人。じつはこの日、紀夫は、社員たちに坂東営業部を辞めると伝えていたのだ。驚く社員を前に、「今日から、わしが坂東営業部を引き継ぐ」と表明する潔。

 

店内に入った紀夫は、すみれとキアリスメンバーの前で、坂東営業部を辞めて、これからはキアリスの経理をしようと思うと宣言し、皆を驚かせるのだった。「僕は、すみれの仕事と家庭がうまくいくように、間に立ちたいんや。君は、ここで好きな仕事をするんや」とすみれと向き合う紀夫。戦争で大事な時間を奪われたが、大事なことは今後何十年も続く人生。「一番、自分らしくいられる場所で輝くすみれを、僕とさくらに見せてくれ。この店をいつまでも育てて、守って、残していこう」とすみれの手を握る。すみれは目を潤ませて「はい」と頷くのだった。

 

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「メリークリスマス!」。聖夜、雪が降りしきる中、サンタクロースに扮した麻田が歌うクリスマスソングが商店街に響きわたる。「♪I’m dreaming of a White Christmas〜♪」

 

「お父さん、お父さんはお母さんのどこが好き?」。さくらが紀夫に訊ねる。紀夫は、「う〜ん、愛に溢れているところ」と答える。そして、「お母さん、お父さんのどこが好き?」と訊かれて、すみれは……。「なんか、なんかな。ちゃんと見てくれてるところ、優しいところ、意外に男らしいところ。家族を大事にしてくれるところ。計算が正確なところ……

。照れる紀夫は、「もうええ」とすみれに声をかけ、微笑むのだった。

 

 

第13週の『べっぴんさん』は、すみれたちが大急の社長・大島(伊武雅刀)からの提案を受け、将来を見据えてキアリスを株式会社にすることを決める。融資の話をするため銀行員が店を訪れるが、すみれたちは女学生のような振る舞いが抜けず、夫たちは心配を募らせる。そこで、経理として正式にキアリスに入った紀夫は、毎日朝礼を実施することやお互いを名字で呼び合うことを独断で決め、キアリスの雰囲気を変えようと意気込む。

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