時代の空気や、女性の生き方を映し出し、数々の話題を生んできたテレビドラマ。懐かしの名作と共に“平成後期”をプレーバック! ヒットドラマが映し出した時代のトレンドとは? コラムニストでドラマウオッチャーのペリー荻野さんが解説してくれた。
「平成後期はインターネットやスマホの普及により、“1億総批評家時代”に突入しました。低視聴率の作品や何か不満がある内容であれば、即座にドラマがたたかれてしまうように。社会では個人情報がさらされ、高齢者がオレオレ詐欺などの事件に巻き込まれるなど、多くの人たちが身近なところに脅威があることに気が付きます。社会に疑心暗鬼になり、くたびれ始めたところで必要とされたのは、強い主人公でした」(ペリー荻野さん・以下同)
『家政婦のミタ』(日本テレビ系・’11年)では何事にも動じることのない家政婦(松嶋菜々子)、『ドクターX』(テレビ朝日系・’12年)では「私、失敗しないので」と有言実行するドクター(米倉涼子)、『半沢直樹』(TBS系・’13年)では理不尽な上司たちに“倍返し”をしてくれる銀行マン(堺雅人)が大活躍。そんな勧善懲悪のドラマが、多くの人の胸を打った。放送中の『下町ロケット』(TBS系)も、阿部寛演じる主人公の熱い言葉にもSNSで称賛の声が上がる。
「10年ほど前から、“仁王立ち”のイメージがある強い女優がドラマをけん引してきたのも特徴的です。代表格は米倉涼子、天海祐希、菜々緒。『義母と娘のブルース』(TBS系)の綾瀬はるかも、変な母親役ではあれど、ズバッと困難を解決するという意味では、強い女性でした」
同時にペリー荻野さんが注目するのは、“劇団出身者”の活躍。阿部サダヲ、古田新太らのドラマでの活躍が著しく、今クールでもムロツヨシが『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)で活躍中だ。
「インディーズの気配がするくせ者役者を見て、『この人変わってるけど誰?』と気になっていたら、バラエティ番組やトーク番組で劇団時代の貧乏自慢をします(笑)。堺雅人も佐々木蔵之介も学生演劇出身。そういった意味でも、堺雅人はカリスマ性もあり、平成後期を代表する役者の一人と言えます」
今やBSやCS、インターネットドラマなど、ドラマの放送媒体も多様化、細分化が進んでいる。
「みんなが自分で見たいドラマを探す時代になっています。平成前期のような高視聴率ドラマ続出とはいかなくとも、いったんSNSで火が付けば爆発的に話題をよびますから、これからもドラマの力は存在感をもっていくと思います」
“平成後”の新しい時代、ドラマ界はどうなっていくのだろう。
「オリンピックや万博が国内で開催される影響もあって、スポーツをテーマにしたものに加えて、昭和や平成に“回帰”する作品が増えるかもしれませんね。黒木華あたりが主人公を演じるような」
新時代のヒット作、また新たなヒロインの活躍も楽しみだ!