高嶋政宏の成熟した面白さは“注目されないこと”で生まれた
(イラスト:おおしまりえ)

年末に放送された『絶対に笑ってはいけないトレジャーハンター24時!』(日本テレビ系)では番組自体のクオリティが良くも悪くも安定しすぎてしまったとか、賛否両論が囁かれています。そのなかでも輝いていたと注目された1人に、俳優・高嶋政宏さん(53)の名前が聞こえてきます。

 

高嶋政宏さんといえば、俳優一家の長男として現在舞台やドラマで活躍中。でも多くの人が、彼に対して特別な特徴を抱いていなかったかもしれません。これまでも世間は弟の高嶋政伸さん(52)と元妻の美元さん(39)の結婚&離婚騒動に注目していたものの、兄の政宏さんは光を浴びていませんでした。しかし最近は演技力だけでなくキャラクターがおもしろいと注目されているのです。

 

その集大成とも言える1冊が、先日発売された「変態紳士」(ぶんか社)です。変に横槍が入らなかったからこそ熟成されたその魅力とは、一体どんなものでしょう。

 

■高嶋政宏はSMが好き!でも注目すべきはそこじゃない……

 

この本いちばんの注目トピックスは、表紙からも漂う彼の『SM好き』という性癖です。ピカピカの俳優としての経歴を持ちながら、堂々とSMマニアであることを公言しています。

 

SかMかと言われると、「Sだと思ってたけど、Mだと思う」というスイッチャー気質(SもMもどっちも行けるタイプ)を語る彼。本書を読み進めるまでどれだけ濃い性癖が披露されているのかドキドキしたものでしたが、いい意味で“意外性”を見せつけられたのです。

 

本書で高嶋さんは「SMとプログレッシブ・ロック(以下プログレ)の伝道師」と自ら広報係を買って出ていると公言しています。でも内容を見ていくと確かにSM愛とプログレ愛は強いものの、ドン引きするほどの変態性を語るではなく“あくまでも初心者が関心を持って読み進められるような濃度”にとどめています。それよりも「好きを突き詰めること」「カッコつけずに生きること」の大切さが熱く熱く語られており、ちょっとだけ勇気をもらえる内容になっているではありませんか。

 

もともと芸能一家という、特殊かつ経済的に恵まれた家庭に生まれた高嶋さん。しかし学生時代はいわゆるデブで冴えない“スクールカースト最下層”の時代を経験していたことが語られています。今のダンディな姿からは想像もできません、しかし今でいう中二病気質のようなものを、お金と時間と凝り性な性格を全力でつぎ込み成熟させた。その結果、今に至っているような気がします。

 

そういう意味で“変態紳士”であるのだなと思いますが、他にも駅弁愛、スピリチュアル愛、健康愛、そして妻愛と突き詰めたジャンルが読みやすく語られています。この人、年末にパンイチで鞭を振るわれるただの変態ではなかったのか……と、爆笑しながら思うのでした。

 

■高嶋兄の成熟から見え隠れする“注目されない”というメリット

 

本書では、高嶋さんの凝り性と変態性が読みやすく語られています。ただ思うのは「彼がここまで面白く成熟したのは、注目されなかったからこその功績である」ということです。

 

たとえば高嶋さんがSMの世界に魅力を感じてすぐスクープなどされていたら、今のような変貌は遂げなかったかもしれません。それはどのジャンルもしかり。注目されなかったからこそ、いい成熟を遂げた今があるように思います。

 

ちなみに同じようなパターンのブレイクには、現在マルチタレントとして活動する篠原ともえさん(39)も当てはまるかもしれません。彼女はシノラーブームに乗ってブレイクし収束した後、自身の趣味である宇宙や服飾のことなどの道へと突き進むように。そしてここ数年はそういった知識を活かして、再ブレイクを果たしています。

 

さすがにSMで再ブレイクというのは、コンプライアンス的に難しいものがあるかもしれません。しかし高嶋政宏さんの魅力と強さは、最近の他人を気にする社会において非常に貴重で見習うべきものであるような気がします、「変態紳士」を読んで、意外にもそんなポジティブな気持ちになってしまったのでした。

 

(文・イラスト:おおしまりえ)

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