今季は2本…恋愛ドラマは共感時代にどう変化していくのか?
(イラスト:おおしまりえ)

2019年秋ドラマが次々放送される中、ふとした疑問を抱いた方はいないでしょうか。「恋愛ドラマを見かけないな」と。無いわけではないのですが、今季純粋に恋愛を軸にしたドラマは『結婚できない男』『モトカレマニア』の2本。2本あるとはいえ、1本は中年男性の恋愛。もう1本はこじらせ女子がテーマですから、いわゆる王道の恋愛ドラマとは言い切れません。

 

現実世界では恋愛をしない人が増えているといった問題もあるようですが、テレビドラマの世界で恋愛はどんな変化をとげているのか。

 

■恋愛ドラマは減ってしまったのか?

 

少し前なら毎シーズン過激な不倫ドラマが放送されていたように思うテレビドラマの世界。インターネットでの娯楽消費が増えた結果、コンテンツには「当事者意識」や「共感」、「知らない世界を垣間見る」「新しい視点」といった部分がより大事にされているように思います。

 

その結果、支持されるドラマのテイストも時代に沿って変化しているような。たとえば恋愛ドラマであれば2016年に『逃げるは恥だが役に立つ』といった男女の役割や結婚制度を根本から考え直すようなヒット作もあったものの、基本的には共感に寄せたようなドラマが人気を集める傾向にあるようです。

 

2017年放送の『東京タラレバ娘』や『あなたのことはそれほど』などはわかりやすい例。アマゾンプライムオリジナル番組『バチェラー・ジャパン』も恋愛リアリティ・ショーという特性を存分に生かし、視聴者に共感と参加者意識を芽生えさせる作りで人気となっております。

 

黄金期の恋愛ドラマは「非現実的な恋愛」「憧れ要素のある恋愛」といったものが人気でした。しかし今の時代は「共感度の高さ+恋愛」や「知らない世界での出来事+恋愛」など何かに付随した形の恋愛という、ニーズの変化をより求められているのかもしれません。

 

■時代を反映する恋愛ドラマの多さ

 

では実際に恋愛ドラマは増えているのか、減っているのか、数字の部分を少し追いかけてみたいと思います。

 

ドラマのジャンルは厳密に恋愛モノかどうか定義するのは難しいものの、2010~2019年のドラマをみていくと恋愛ドラマが締める割合に変化があります。今回各年代のテレビドラマ本数と、それに占める恋愛ドラマの割合を示したデータを割り出してみました。

 

2010~2013年には恋愛ドラマが占める割合が10%台に落ちたものの、2014年から盛り返し、2016~2017年には2割近い割合で恋愛ドラマが占めるようになっています。

 

2010年 10/98本(10.2%)
2011年 12/100本(12.0%)
2012年 9/109本(8.3%)
2013年 9/109本(8.3%)
2014年 15/108本(13.9%)
2015年 14/97本(14.42%)
2016年 17/87本(19.5%)
2017年 17/78本(21.8%)
2018年 12/73本(16.4%)
2019年 6/55本(10.9%)

 

ちなみに2014年の変化のきっかけを考えると、2013年には『半沢直樹』や『あまちゃん』『ドクターX~外科医・大門未知子~(2期、平均視聴率は2期より20%台になっている)』といったブームにつながるドラマが多く放送されておりました。結果としてテレビドラマ自体が注目を集めたのも1つの要因としてあるでしょう。

 

また注目したいのは、2015~2017年にはドラマ自体の本数が減っているのに、恋愛ドラマが増えているという現象です。

 

実はこの3年間は“不倫黄金期”ともいえる3年です。2014年には上戸彩さん主演『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』が放送され、不倫ドラマの注目度が上がるきっかけになりました。そして2015年末にはタレント、ベッキーさんの不倫を発端とする、芸能界の不倫ブームがありました。2016年には『不機嫌な果実』のドラマが約20年ぶりに新たに放送され、他にも『毒島ゆり子のせきらら日記』『せいせいするほど、愛している』などの不倫ドラマが増えています。

 

このように恋愛も時代のニーズを上手く汲み取り、変化しているのがわかります。これからも恋愛って、テレビで観たいものであり続けるのでしょうか。

 

■今後、恋愛ドラマはどうなっていくのか?

 

不倫ブームも落ち着いた今、では恋愛テレビドラマは今後どうなっていくのでしょう。その先に見えてくるのは、2つのポイントがあると思います。

 

・共感に寄せる or ありえない設定での恋愛ドラマが増える

 

1つは『バチェラー・ジャパン』などに代表される(厳密にはドラマではないですが)非現実的だけど共感力の高いドラマが増えるか、逃げ恥に代表されるような新たな価値観や関係性を問いかけるドラマが増えるかもしれません。

 

最近ではフェミニズムなど女性の立場の変化が大きく叫ばれています。恋愛というシーンにおいても、新たな関係性を提示するような作品が今後増えていくことは十分考えられます。

 

・LGBT要素をふくんだ恋愛ドラマが増える

 

もう1点は、LGBT要素を含んだ恋愛ドラマが増えていくというものです。というか、男性同士の作品に関してはすでに増えています。『おっさんずラブ』や『きのう、何食べた?』などはゲイカップルを主人公にした恋愛ドラマ。『おっさんずラブ』に関してはその人気から映画になるなど、ブームを呼んでいます。

 

では逆にレズビアンカップルに関してはというと、最近だと野島伸司氏がオリジナル脚本を手がけたFODオリジナル番組『百合だのかんだの』があるくらい。ここはゲイとレズビアンの社会的な認知の違いや、原作の多さの差などもあるのかもしれません。

 

とはいえ、今後は多様性をふくんだカップルが注目を浴びる作品も増えていくのは間違いないでしょう。

 

憧れを含んだテレビドラマは、気づけば「分かる」や「新しさ」を含んだコンテンツになっていきました。そしてこれからはどんな作品が、どんな楽しさを運んできてくれるのでしょう。

 

2019年は、恋愛ドラマがちょっと少なめというのが現状です。しかしまずはこの先の変化を想像しながらテレビの前に座り、楽しんでみたいと思います。

 

文・イラスト:おおしまりえ

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