最後まで、スターの姿勢を崩さなかったーー。
4月3日、急性心不全のため亡くなった田村正和さん(享年77)。その訃報は、葬儀をすべて終えてから公表され、田村さんの旅立ちは静かなものだった。
日本映画界創成期の名優・阪東妻三郎の三男として生まれ、兄弟とともに俳優として活躍した。ダンディーを絵に描いたような人なのに、ドラマ『古畑任三郎』シリーズではちゃめっ気たっぷりな警部補を演じ、10年以上続く大ヒット作に。
年を重ねるほどに魅力も増していったが、プライベートは一切公表せず、鉄壁のガードを貫いた。
本誌では、田村さんの当たり役だったドラマ『眠狂四郎』の撮影現場に、’72年、’89年と2度にわたり密着。黒のロングコートにスカーフを合わせたおしゃれな私服姿で撮影所に入ってきたり、撮影の合間も物憂げな表情で椅子に座っていたりと、大人の男の色気を感じさせる人だった。
【’72年】ドラマ『眠狂四郎』京都ロケ
初めて眠狂四郎を演じたのは29歳のとき。当時その美しさが話題に。
【’89年】ドラマ『眠狂四郎』撮影密着
45歳で2度目の『眠狂四郎』を演じる現場に密着。撮影所へ笑顔で入っていく田村さん。現場にケーキを差し入れるなどの心配りも。
【’93年】ドラマ『ローマの休日』イタリアロケ
あの名作のリメークドラマ撮影のためローマへ。安田成美(54)演じるヒロインとバイクに乗って。
田村さんと共演した女優は、こう思い出を振り返る。
「一緒に焼き肉屋さんに行っても、私の分ばかり焼いて食べさせてくれて、自分の分は後回し。レディファーストで優しくて、ふだんでも『田村正和』していてカッコよかったです」
また、ドラマ関係者は次のように語る。
「地方ロケだと、田村さんから『ホテルのカーペットやバスタブを赤にしてほしい』、と要望があったりして、作品はもちろん、現場への気持ちの持っていき方にまでこだわる完璧な人でしたね」
俳優の美学を体現したスター・田村正和さんの姿は、私たちの中に輝き続けている。