当時本誌に掲載された『青色のタペストリー』未収録カット(撮影:中島清一) 画像を見る

住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代にはやった歌やドラマの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。

 

バブル期に人気になった“カフェバー”風の落ち着いた店で、髪飾りをつけたメスのペンギンが松田聖子の『SWEET MEMORIES』(’83年)をしっとり歌う。客席ではビール片手に、昔の恋愛を思い出したかのように目から涙をあふれさせるオスのペンギン。そこで「泣かせる味じゃん」と、所ジョージのナレーションが……。

 

サントリー「CANビール」のアニメCM(’83年)は、誰もが記憶する’80年代の代表作だ。

 

「かわいいペンギンのキャラクターが人気となり、ノートや筆箱などのグッズも販売されました。大人向けのお酒のCMキャラが、中高生にも受け入れられたことは、異例だったと思います」

 

そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(53)。

 

アニメ映画『ペンギンズ・メモリー幸福物語』(’85年)も製作・上映されるほど、ブームとなった。一方、当時、アイドルが出演するCMは、化粧品やお菓子、自動車のメーカーのものが多く、本人は登場して曲を披露するのが定番。

 

松田聖子の新境地を開いた「SWEET MEMORIES」のCM採用
画像を見る 83年11月の日本歌謡大賞ノミネートの会場で大人っぽい表情を見せる聖子。この年は『ガラスの林檎』で最優秀放送音楽賞を受賞

 

「それがお酒のCMで、アニメ。曲も、当時は誰が歌っているのかクレジットがありませんでした。『SWEET MEMORIES』は『ガラスの林檎』のB面曲で、一部の聖子ちゃんファンにとっては『制服』と並ぶ隠れた名曲として知られていました。しかし、いまのように簡単にネット検索ができない時代だったため、多くの人が、『誰が歌っているの?』『この声、聞いたことがある!』『聖子ちゃんじゃない!?』と話題に。後にテロップで『松田聖子』と入ったことで広く知られ、ヒット曲となり、レコードも“両A面”として再発売されました」

 

スローテンポでしっとりと聞かせるジャズアレンジの曲は、歌手・松田聖子にとって、新境地を切り開く作品となった。

 

「それまでの聖子さんの曲には大人の恋愛へのドキドキ感があり、“好きな人についていく”といった初々しく、前向きな歌詞が多かった。もちろん失恋の悲しさを歌う曲もありましたが、この曲はさらに別れを回想し、美しい思い出になったという大人の目線。演歌のような世界観でもありました」

 

また、1番は日本語だが、2番は英語の歌詞だったことも特徴。

 

「英語で少しリズムを崩して歌うテクニックも披露。聖子ちゃんの海外進出(’90年)への布石ともなった曲の一つではないでしょうか」

 

同曲は多くの著名アーティストがカバーするなど、いまも歌い継がれている。

マーケティングライター、世代・トレンド評論家

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