■肖像権侵害の可能性も…古塔氏が“真価”を生むには
また大塚教授は、『ロッキング・オン』の件について「これは肖像権の侵害にあたるかもしれません」と指摘する。
「誰でもするような、ありふれたポーズならば問題ありません。ポーズそのものにオリジナリティがないためです。ただ、『ロッキング・オン』に提供したイラストのポーズを“よくあるもの”とするのは少々苦しい。それに女性の髪型も左右反転にしただけで、ほぼ一緒に見えます。
肖像権とは、自分の姿がみだりに複製されることから守るための権利です。トレースして制作していたならば、被写体である人物の肖像権の侵害にあたります」
さらに、大塚教授は「人物写真は撮影したカメラマンの著作物です。写真をトレースして作品を制作していた場合、著作権の侵害となります」と明かした。
今のところ、古塔氏が訴えられたという情報を目にしない。しかし、大塚教授は「だからいい、というわけでもない」と続ける。
「こういった事例が次々明るみになると、“パクリ疑惑”で実際に訴訟を起こされた際、『他人の作品を勝手に使う傾向のある人』と裁判官は考えるでしょう。そういう心証があると、裁判が不利な方向に進むこともあります。
何より一連の騒動で、これから古塔さんは険しい道のりを歩むことになるでしょう。裁判になっていないとはいえ、作風や制作方法を一新しないとクライアントもオファーしづらいですからね」
そして大塚教授は、こう結ぶ。
「これまで古塔さんは、多くの人々を惹きつける作品を作ってきました。もしトレースして制作していたのならば、『ベースになる写真の選び方が上手い』といえるのかもしれません。これもまた、一つの才能です。
著作権法上ではトレースする場合、作品を“新たな創作”といえるレベルにまで到達させる必要があります。ですから、古塔さんは本当の意味で“新たな作品”を作り上げることが課題といえます。
見事達成できれば、その時、クリエイターとしての真価が生まれるのかもしれません。イラストレーターを続けていくのなら、これからが“本当の修行”でしょうね」