「幸福感を感じない人が、食に走るらしいのよ」
4月4日に放送された『しゃべくり007』(日本テレビ系)でそう語ったのは、マツコ・デラックス(49)。以前は一食三合ほどのお米を食べていたにもかかわらず、最近は食欲が減っていることに触れ、幸福感と満腹感の関係性について持論を展開した。
マツコのこの発言を《まじで真理》だと取り上げたツイートには29万件ものいいねが寄せられ、《私のことか》《あ、わかる。失敗やらかすと、甘い物食べたくなる》など多くの共感の声が集まっている。
確かに、ストレスが溜まった時に“食べて発散する”という人は多いようだ。’21年にパナソニックが実施した調査では、ストレス解消法として「好きなものを食べる・外食する」と答えた人が55%と過半数以上だった。
では、なぜ人は“不幸せ”と感じると食に走るのか? ゆうメンタルクリニックの総院長で精神科医のゆうきゆう先生に聞いた。
「欲求不満を抱えている人が、生活に満足感を感じられず、その埋め合わせに『食べ過ぎる』『美食を求める』という面があっても不思議ではありません。
食事をしておいしさを感じたりお腹がいっぱいになると、ドーパミンという快感や幸福感を与える神経伝達物質が放出されるからです。不幸せだからご飯を食べる、というのは典型的な“ドーパミンが不足しているから、ドーパミンを求める”という行動。
もちろん、不幸すぎてうつになった場合は、逆に食欲が低下することもあるので、不幸せだから必ず食に走るとはいえませんが……」
そもそも生活にハリがなく、幸せを感じられない状態のことを、ゆうき先生は次のように説明する。
「欲求が満たされないために不幸な人は、『あぁ、自分の顔がもっとよかったら』『もっとお金があれば幸せなのに』『恋人さえいればいいのに』というように、“これさえあれば幸福”というものを求めています。
しかし、その幸せを得るための行動をとることは少なく、エンドレスに欲求不満を抱き続けてしまうのです」
そんな欲求不満の“不幸せ”な状態でお腹が満たされると、ドーパミンの作用ですぐに幸せになれるのだ。
「しかしながらドーパミンの作用は一過性です。食にしか幸せがない場合、すぐに幸福感は薄れることになります。食べ過ぎたときに、後悔するのもこのためです」
ストレスを感じているときや辛いときに食に走ることは、手っ取り早く幸せを感じられるため、悪いことではないと、ゆうき先生。
「お菓子や甘いものであれば、食べ過ぎで肥満や糖尿のリスクがありますが、そうでないなら、食べ過ぎにさえ気を付ければ問題ありません」
とはいえ、“欲求不満”を感じる人は、並行して問題解決のための行動をとったり、誰かと辛さを共有して、気持ちをラクにするのが重要だと続ける。
「哲学者のアランが書いた『アランの幸福論』には、心理学的にも納得できることが多く書かれています。そこでは幸福を『困難に向かって努力する途中で感じる心の状態である』と定義。その場合、幸せになるための一番良い方法は、何か自分にとっての夢や向かうべきものを見つけて、そこに向かって行動することではないでしょうか。
そんなのすぐに見つからないという人には、運動をおすすめします。ちょっとしたストレッチでも構わないので、定期的に運動をすることで気持ちが前向きになり、幸福感を抱きやすくなるんです。健康にもなれますし、うつにもなりにくくなるのでオススメです」
「食べてるときが幸せ!」そう感じるのは、気のせいではないようだ。