住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、夢中になったファッション雑誌の話。活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。
■自然体でサバサバした女性が憧れの存在に
『mc Sister』は、日本のファッション誌の草分けともされる『メンズクラブ』(mc)の妹(Sister)雑誌として、’66年に創刊した10代少女向けの月刊誌。
「アイビールックが流行していた当時は、アメリカン・トラディショナル(アメトラ)に興味を持つ、おしゃれな女子が増えていました。さらに’70年代後半になるとニュートラやハマトラが流行し、トラッドな着こなしに注目が集まるように。こうしたトレンドをいち早く取り入れつつ、“おしゃれなモデル”に憧れる若い女性をターゲットにして、『mc Sister』は着実に部数を増やしていったのです」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(54)。『mc Sister』から、さまざまなスターが輩出された。
「高見恭子さんや今井美樹さん、RIKACOさんなど、表紙や巻頭を飾るモデルは“シスターモデル”と呼ばれ、その後、テレビなどにも進出しました。アイドル全盛でもあった’80年代は、ヘアスタイルやファッション、しぐさも含め、女のコに“かわいい”が求められた時代ですが、シスターモデルは着こなしも自然で、自由な印象がありました。またしぐさにおいても、たとえば笑うとき、手で口を隠さず、大きな口を開けて笑う今井美樹さんのように、自然体でサバサバした女性が憧れの存在として注目を浴びるようになっていきました」
こびることなく、自らのファッションを楽しむシスターモデルたちは、“男性に付き従う世の中”を窮屈に感じていた女性たちから、時代の一歩先、二歩先を走っているように見えたのだろう。
「毎年夏に開催された『シスターフェスティバル』のチケットは入手困難で、学校で『◯◯先輩が入手方法を知っているらしい』などと、まことしやかな噂も流れたりしたものです」
ファッションやビューティだけでなく、音楽や映画、グルメ情報、街中でのスナップなど盛りだくさんだった『mc Sister』。
「とくに洋服などの“買います、売ります”コーナーや、文通相手を募集したり、ペットの写真を投稿したりするページは、SNSを使いこなす現代のティーンには必要ないでしょう。しかし、そのぶん、雑誌から人の気持ちやあたたかさが感じられたものです」
雑誌にもっとも勢いのあった時代を駆け抜けた『mc Sister』は’02年に休刊。ひとつの時代が終焉を迎えたのだった。
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍