■「遺産的建築をちゃんと残さなければ」
今回のヴィラ・クゥクゥ購入に、どれほどの費用がかかったのか。不動産関係者はこう話す。
「都内の超一等地にある約60坪の豪邸ですから、土地だけでも約3億円はくだらないでしょう」
建物としての資産価値について、ヴィラ・クゥクゥ継承の窓口となった「住宅遺産トラスト」の担当者は説明する。
「一般的な住宅とは異なり、歴史的建造物ですから、美術品と同じで価格に明確な基準はありません。ただ都心の一等地にあり、木造ではなく移築もできませんので、鈴木さんが引きとってくださらなければ、おそらく更地で取引されていたことでしょう。
鈴木さんは、フランス東部にあるル・コルビュジエの手がけたロンシャン礼拝堂も実際に訪問されていて、ヴィラ・クゥクゥを最初に見学された時すぐに『ロンシャンを思い出します』とおっしゃられていました。このように建築や建築家のことを熱心に学ばれている方です。日本の建築関係者は皆、鈴木さんにとても感謝していると思います」
前出の「Casa BRUTUS」のインタビューで、《この素晴らしい遺産的建築をちゃんとした形で残さなければと、いま責任も感じています》と語っている京香。
改修には、さらにどれほどのお金がかかるのか。前出の『住宅遺産トラスト』によれば、
「60年以上前の建物ですので、設備を含め、丁寧に手を入れなおさなければなりません。鈴木さんは、修繕に際し、専門家と共にできるだけオリジナルの状態へと細かく調べられて取り組まれています。大変なご負担がかかることです」